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早大恩師が語る鳥谷敬の「成長率」。
同級生・青木宣親とも違う独自の輝き。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/06/20 16:30
2005年以来フル出場を続ける鉄人・鳥谷敬。打率は.262~.301ときわめて安定し、ゴールデングラブも2度手にしている。今年1500本安打を達成し、2000本へ向けて驀進している。
大学時代に語っていた、自身の「武器」。
その鳥谷は学生時代、プロ入りを控えこう語っていたものだ。
「スタイルとしては松井稼頭央選手のように三拍子そろった選手になりたい」
その中で、すぐにでも通用すると思える部分はと問うと、意外にもこう答えた。
「足ですかね。打ったり、守ったりすることに関しては、相手によってずいぶん変わってくる。だから、実際にやってみないとまだわからない」
しかし盗塁数に関して言えば、これまでは2011年の16盗塁が最高である。ちなみに、ホームランは'09年の20本が自己最多。打率は'10年に残した.301がキャリアハイだ。
松井の全盛期のように、ハイレベルで三拍子そろっているかというと、そうでもない。そこが野村を「あんなもんじゃない」とぼやかせてしまうところなのだ。
首位打者よりも貴重な、鳥谷だけの輝き。
ただ、鳥谷にはこんな長所もある。じつは、3年連続で四死球数がリーグ最多なのだ。それにともない出塁率も高い。
そして何より鳥谷の価値を高めているのは、ショートというハードなポジションをこなしながらも試合に出続けているということだろう。入団1年目の9月から続いている連続試合出場は歴代3位となる1388試合(6月20日現在)になった。また現役選手で10年間以上プレーし、二軍落ちを経験していないのは鳥谷が唯一だ。
競馬には「無事これ名馬なり」という格言があるが、鳥谷も「無事これ名選手」と言っていい。鳥谷は、単年の成績で評価すべき選手ではないのだ。
今季、ここまで高打率をキープしている鳥谷は首位打者をねらえる位置にいる。だが、かえってタイトルを獲ってしまうと、鳥谷本来の価値に目が行かなくなってしまうのではないかとも思える。
一見、「あんなもんじゃないんだけどなあ」と思える選手が、プロでこれだけ長く第一線でプレーできている理由。そこにこそ青木とは違う鳥谷だけの輝きがある。