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グウィンとウェルチ。
~傑出した安打製造機の早逝を悼む~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byKazuaki Nishiyama

posted2014/06/21 10:30

グウィンとウェルチ。~傑出した安打製造機の早逝を悼む~<Number Web> photograph by Kazuaki Nishiyama

殿堂入り資格を得た1年目で97%以上の得票を得て殿堂入り。母校の野球場は『トニー・グウィン・スタジアム』と名づけられ、パドレスでも19番が永久欠番となっている。

イチローを遥かに上回る、三振の少なさ。

 象徴的なのが、異様なまでの三振の少なさだった。グウィンは通算で10232回打席に立ち(9288打数)、3141本のヒットを打ち、434回しか三振を喫しなかった(21.4打数に1回しか三振しない。四球は790個)。'95年などは、577打席535打数15三振(35.7打数に三振1回)という超絶的な数字を残している。現在の球界を代表する三振王のアダム・ダンなどは、つい最近もわずか8試合で15三振を喫していたし、'04年から'06年までの3年間で557個の三振を記録したことがある。

 ダンの場合は極端だが、他の安打製造機と比べても、グウィンの三振の少なさは群を抜いている。ジョージ・ブレット(21年間)が10349打数で908個(11.4打数に三振1回)、ウェイド・ボッグス(18年間)が9180打数で745個(12.3打数に三振1回)、イチロー(14年目)が8727打数で899個(9.7打数に三振1回)。「三振しない男」という異名をとったリッチー・アシュバーン(15年間)でさえ、8365打数で571三振(14.6打数に三振1回)という数字にとどまっているのだ。

グウィンから1試合3三振を奪った、たった1人の選手。

 大投手とのマッチアップを見ても、グウィンは素晴らしい成績を残した。あのグレッグ・マダックスとは、107回対決して4割1分5厘と打ち込み、喫した三振はゼロ。ペドロ・マルティネスとも36回対決して三振がゼロ。そもそも、1試合に2度以上三振した試合が34回しかなかったというから、彼のバットにボールをかすらせないのは至難の業だったというほかない。

 そんなグウィンから、1試合3三振を奪った投手が大リーグ史上にひとりだけいる。試合は'86年4月14日の対ドジャース戦。相手投手はボブ・ウェルチ。そう、冒頭でも紹介したが、グウィンが亡くなるわずか1週間前に心筋梗塞で急死したあのウェルチだ。不思議な因縁を感じるのは、私ひとりではないと思う。

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