野球クロスロードBACK NUMBER
“今の西武らしさ”を貫いて復権を。
田辺監督代行と選手の厚い信頼関係。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/06/09 12:15
初陣となった巨人戦で、メンバー表確認を行なう田辺徳雄監督代行。自身が選手時代に経験した「黄金時代」は再び西武に訪れるか。
巨人戦で出た渡辺政権時のような「西武らしさ」。
田辺監督代行にも共通する点がある。
'02年から二軍の打撃コーチなどを歴任し、'13年からは一軍の打撃コーチに昇格。一部では、「次期監督候補では?」と名前が挙がるほど、その指導力を高く評価されていた。
現在の選手を誰よりも長く見ている田辺だからこそ、その姿勢も寛容になれるというもの。茶髪やひげは「常識の範囲内であれば問題なし」と明言し、試合でも「ベンチを気にする必要はない。思い切りやれ」と選手の尻を叩く。そして今、チームは渡辺政権時に近い雰囲気を取り戻しつつある。
6月7日の巨人戦は、かつての「西武らしさ」が出ていた試合だった。
初回、中村剛也が「真っ直ぐを待っていたんですけど、(スライダーに)うまく反応できました」と先制二塁打を放つと、6回には「バッティングカウントだったんで思い切り振りました」とレフトへ放物線を描く。
コーチ時代の田辺から、「逆方向に打つことを意識しろ」「1本のホームランより3本のヒットを心掛けろ」と指導を受け続けた栗山巧は、3回に貴重な追加点となる一発を放った。「引っ張っちゃいましたけどね(苦笑)。まあでも、3番は大きいのも打たないといけないんで出てよかったです」と、反省しつつ自身の結果に満足げな表情を浮かべた。
手塩にかけて育てた“同期入団”中村と栗山の心意気。
「田辺西武」として初勝利。指揮官は、「別にホッとはしていませんけどね」と言いながらも、穏やかな表情で試合を振り返る。
「打線はここのところ好調だったんでね、打つべき人間が打ってくれたのはよかったと思います。中村がタイムリーとホームラン、栗山も打ってくれたんで、二軍時代のことをちょっと思い出しましたね」
中村と栗山は、田辺が二軍のコーチに就任した'02年の入団選手。苦楽を共にした彼らは今、4番と主将という立場でチームを牽引する存在となった。ふたり以外の主力にも浅村、秋山翔吾、金子侑司と田辺代行の愛弟子は多い。
だからこそ、恩師に報いなければならない。そんな想いが栗山の言葉から伝わってくる。
「僕らと田辺監督は“同期入団”ですからね。当時を思い出すと感慨深いものはありますよ。だから何とかね、気持ちを切り替えて戦っていきたいですよね」