野球クロスロードBACK NUMBER
“今の西武らしさ”を貫いて復権を。
田辺監督代行と選手の厚い信頼関係。
posted2014/06/09 12:15
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
組織の伝統とは、最初から「そういうものだ」と当たり前のように認識し、個人が自覚を持って言動に移して成り立つものである。
身だしなみであれば、球団創設以来、「紳士たれ」という金科玉条があることから最低限の規律を守る巨人がいい例だ。
「ユニフォームとは選手にとって『ドレスコード』です。時代によって選手の意識も変わってきますから、多少は許容します。しかし、明らかにチームの意に沿わない容姿であれば、グラウンドに立つ資格はありません」
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原辰徳監督は、はっきりとそう言っていた。
戦術面で伝統を貫いているとすれば中日になるだろうか。
「当たり前のプレーを当たり前にこなす。それができなければプロとは呼べない」
2004年に落合博満が監督に就任してから顕著になったが、中日は今もそれを徹底している。キャンプでは「6勤1休」のハードトレーニング、試合でも「アライバ」が代表していたように1、2番は安打や四球、盗塁で得点圏に走者を進め、中軸が走者を還す。下位打線ならバントなどの小技をしっかりと決める。中日というチームに属している以上、それができなければレギュラーはおろか、一軍にすら定着できないのだ。
巨人と中日は毎年のように優勝争いを演じる常勝チームである。伝統が選手全員に浸透すれば、組織は必然的に骨太になっていく――。それを体現しているのだ。
「常勝西武の復権」を掲げた伊原監督だったが……。
今年の西武はそうではなかった。
2008年から'13年まで指揮を執っていた渡辺久信は、6年間で新時代の西武の伝統をうまく築き上げてきた。
練習では徹底的に選手を鍛え上げるし、至らない点があれば叱責だってする。それでも、試合になれば選手の個性を尊重し、のびのびとプレーさせる。昨年、4番として打点王を獲得した浅村栄斗がいい例だろう。
だが、伊原春樹が監督となった今年は、その伝統は完全に失われた。
「常勝西武の復権」。就任の場で宣言したものの、伊原監督の選んだ道は空回りした。