スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
田中将大の好投とトロントの猛打。
~ア・リーグ東地区、激戦の行方~
posted2014/06/08 10:40
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
田中将大が、5月のア・リーグ月間MVPを受賞した。6試合(43イニングス)に投げて5勝1敗。防御率が1.88で1完封、奪三振=42、与四球=6は立派な数字だ。ヤンキースの投手としては、2013年8月のイヴァン・ノヴァ以来。新人投手としては2013年7月のクリス・アーチャー(レイズ)以来の快挙だ。
にもかかわらず、田中将大を除くヤンキースはいまひとつパッとしない。というか、5月のア・リーグ東地区はブルージェイズの快進撃ばかりが眼を惹いた。4月末には12勝15敗の成績で地区最下位を争っていたのが、5月31日には33勝24敗。6月に入っても、勝ち星を2個ほど上積みして同地区の首位を走っている。
最大の原動力は、エドウィン・エンカーナシオンの本塁打量産だ。4月の出遅れが祟って、総数はネルソン・クルーズ(オリオールズ)に次ぐ19本だが、5月は月間16本の固め打ちを見せた。これは、あのミッキー・マントルが1952年に記録した「5月のア・リーグ月間最多本塁打数」に肩を並べる数字だった(ちなみに、ア・リーグの月間最多本塁打記録は、1937年8月にルディ・ヨークが打った18本。ナ・リーグでは'98年6月にサミー・ソーサが記録した20本が最多)。
脅威のパワーデュオに、脇を固める役も十分。
エンカーナシオンは、今年31歳になったドミニカ出身の一塁手だ。本塁打を量産しはじめたのは2012年からで('12年=42本塁打、'13年=36本塁打)、'13年も5月上旬から7月末までの間に20本塁打の固め打ちを見せている。
エンカーナシオンの噴火に刺激されたか、かつての主役ホゼ・バティスタも、久々に好調だ。2010年に54本塁打、'11年に43本塁打を記録したあとは一服気味だったが、今季は6月4日現在、すでに14本塁打を放っている。しかも打率が3割1分で、OPSが.991。いまの両者なら、リーグを代表するパワーデュオと呼ばれても不思議ではない。
ふたり以外では、実力派のメルキー・カブレラが好調(3割3厘、8本塁打)だし、新鋭のホアン・フランシスコやブレット・ローリーも台頭が著しい(ともに9本塁打)。ローリーは24歳の若手で、もしかするとこれから化けるかもしれない。