スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
急造投手と観客の喝采。
~イチロー初登板への期待の眼~
posted2014/05/24 10:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Kyodo News
ジェフ・フランコーアの名前が、ふたたびメディアを賑わしている。え、あのフランコーアが? とつぶやく人も少なくないはずだ。
2005年、「大型新人」フランコーアは『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙を飾った。メジャーに昇格して24試合で、彼は打率=.419、出塁率=.425、長打率=.802の数字を残したからだ。さらに注目を集めたのは、その強肩だった。ブレーヴスのライトを守って、67試合で13補殺。'07年にはリーグ最多タイの19補殺を記録し、ゴールドグラヴに輝いている。
その強肩ぶりは、テレビやインターネットの動画でもしばしば紹介された。ダイレクトの返球は朝飯前で、本塁を狙う三塁走者や、三塁をうかがう二塁走者はつぎつぎと刺されていった。アナウンサーに「レイザービーム!」と絶叫させたのは、'01年のイチローだけではなかったのだ。
'06年、'07年と、フランコーアは連続100打点を記録した。ただ、極端な早打ちが祟って出塁率は上がらなかった。'09年、メッツにトレードされたのを機に、彼はジャーニーマンになった。'10年がレンジャーズ、'11~'13年夏がロイヤルズ、'13年夏からはジャイアンツ。'14年はインディアンスとマイナー契約を結ぶものの、春季トレーニング中に契約を解除され、3月末になんとかパドレスとのマイナー契約に漕ぎ着けている。
外野手の強肩をマウンドで発揮したら……。
というわけで、現在30歳のフランコーアは、エルパソ・チワワズ(パドレス傘下の3Aチーム)に所属している。ポジションはいまも外野だが、今季は投手としても5試合に出場した。
え、やはり! と叫んだ人もいるのではないか。ブレーヴスやメッツで桁外れの強肩を披露していたころ、フランコーアならマウンドから時速100マイルのストライクを投げられるのではないか、という声はしばしば聞こえてきたからだ。まあ、たしかに。