スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
2人の偉大な“カピタン”が退団。
バルサが遂に認めた「1つの終わり」。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byFC Barcelona via Getty Images
posted2014/05/22 16:30
プジョルの退団会見には、メッシやシャビなどチームメイトの他、歴代クラブ会長、クライフやイエロなどのレジェンドも駆けつけた。
6シーズンぶりに主要タイトル無冠が確定。
トップチームでデビューしてほどなく、再びBチームに戻されたことに激怒して練習を数日ボイコットした20歳の頃より、そういった不器用なところは全く変わっていない。昨年1月に突如としてクラブとの契約更新に応じない意思を公表し、賛否両論をもたらした際もそうだった。
「ビクトルは自分と同様に、良い意味でクレイジーなんだ。俺たちは激しく生きていくことしかできない」
先日ダニエウ・アウベスはそう言っていたが、バルデスはそれが自分にとってマイナスとなることを分かっていながら、最後まで天の邪鬼な自分に正直であり続けた。その性格をどう評価するかは人それぞれであるが、それを理由に世界で最も難しいポジションと言われるバルサの正GKの座を10年間も守り続けてきた彼の功績が色褪せることはないし、あってはならないと思う。
5月17日のリーガ最終節。優勝のかかったアトレティコとの大一番を引き分けで終えたことで、バルセロナの'07-'08シーズン以来となる主要タイトル無冠が確定した。
分かっていても、直視したくなかった盛者必衰の理。
この試合後、メディアに応対した数少ない選手の一人であるハビエル・マスチェラーノは言っていた。
「1つのサイクルが終わった。望む、望まないにかかわらずね。これは新たに勝者のチームを構築するためには直面しなければならないことだ。現実は変化を必要としている」
バルサのサイクル終焉論はジョゼップ・グアルディオラが退任した2年前から常々言われてきたことだが、それを当事者たちが認めたのはこれが初めてのことだ。
それが現チームの改良型になるのか、全く新しいチームになるのかは分からないが、2人のキャプテンが去ったバルサが一時代を築いたチームとは異なるものになることは間違いない。
分かっていたけど、直視したくなかった盛者必衰の理。マスチェラーノの率直なコメントは、この2年間誰もが抱いてきた心境を代弁するものだった。
「ここでも他のクラブでも、この5、6年間の自分たちのような経験をしてきた人は他にいないと思う。スペクタクルだったよ。いつまでも終わってほしくないものだからこそ、こんなに辛く感じるのだろう。でもそれがこの世界の決まりなんだ」