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超高速馬場で争われる天皇賞・春。
「一強」キズナの牙城を崩すのは?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/05/03 08:00
キズナは7枠14番。国内で初めてとなる2ケタ馬番の発走となるが、佐々木晶三師は「この距離なんで、どこでもよかった」とコメントしている。
キズナに勝てるとすれば……。
このメンバーのなかに、昨秋、ニエル賞と凱旋門賞に出ていたとしたら、キズナに先着したかもしれない、という馬がいるだろうか。ニエル賞は3歳限定なので、5歳以上の馬たちにとってはあり得ないタラレバなのだが、いずれにしても「ウーン」という感じがする。
「一強」のキズナの牙城を脅かしそうな馬の筆頭は、「不治の病」と言われる屈腱炎を克服して前走の日経賞を快勝したウインバリアシオン(牡6歳、父ハーツクライ、栗東・松永昌博厩舎)か。
3歳のときにダービーと菊花賞で2着、昨年の有馬記念でも2着と好走しているのだが、その3戦とも勝ったのがオルフェーヴルだったので、あまり惜しくない2着だった。陣営にしてみれば、やっと化け物のオルフェが引退したと思ったら、新たな怪物のキズナが出てきて参ったなあ……といったところだろう。
シュタルケを鞍上に迎えたウインバリアシオン。
しかし、一昨年の日経賞ではのちに香港のGIを勝つルーラーシップに先着する2着となり、つづく天皇賞・春で、オルフェが11着に沈んだなか3着に来た力は侮れない。ひとマクりで圧勝した前走を見ると、そのときより強くなっていることは明らかだし、アンドレアシュ・シュタルケを鞍上に迎えた今回は、早めに動いて新たな味が引き出される可能性もある。勝負どころからキズナと馬体を併せてビッシリ叩き合うシーンが見られるかもしれない。
昨年のこのレースで単勝1.3倍の圧倒的1番人気を裏切り5着に終わったゴールドシップ(牡5歳、父ステイゴールド、栗東・須貝尚介厩舎)も復調しつつある。無尽蔵のスタミナとロングスパートを武器とするこの馬と、新たな鞍上のクレイグ・ウィリアムズはいかにも手が合いそうだ。
昨年の覇者フェノーメノ(牡5歳、父ステイゴールド、美浦・戸田博文厩舎)は、左前脚繋靱帯炎による休養を経て、どうにかここに間に合わせたという印象が否めない。それに、メンバーも昨年より強化されているだけに、メジロマックイーン、テイエムオペラオーにつづく史上3頭目となる連覇は難しそうだ。