MLB東奔西走BACK NUMBER
田中将大、“宣伝通り”のスタート。
次に掴むべきはNYのファンの心だ。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/05/03 10:40
4月27日のエンゼルス戦、制球が定まらず終始硬い表情をしていた田中将大投手。ここまで5試合に登板し、3勝0敗、防御率2.27と不敗神話を継続している。
メジャーでもトップクラスの省エネ投球。
制球力の高さは無駄球を減少させ、メジャーでは理想的な“少ない球数で長いイニングを投げる”というエースの条件を満たすことにつながる。実はこの点については、他の日本人投手との比較どころではなく、すでにメジャーでもトップクラスにランクしているのだ。
4月29日現在、田中を除くア・リーグ、5試合終了時点での投球イニング数、上位5人は下記の通り。
選手名 | 開幕5試合の投球回数 | 1イニング当たりの平均球数 |
デビッド・プライス | 35回2/3 | 14.64 |
フェリックス・ヘルナンデス | 35回1/3 | 14.15 |
ソニー・グレイ | 32 | 16.22 |
ジョン・レスター | 33回2/3 | 16.49 |
ジェームス・シールズ | 33 | 16.24 |
田中将大 | 35回2/3 | 14.52 |
ここでも、田中はまったく遜色がない成績を残している。しかも、1イニング当たりの平均球数では、ヘルナンデスに次いで田中は2位である。
中継ぎ投手に負担をかけないというエースの条件。
単に成績ばかりでなく、エースとしての信頼感も着実に獲得している。特に4月16日のカブス戦がそれを強烈に印象づけた。
この日は前日の登板が雨で流れ、スライドでダブルヘッダーの第1試合を任された。このようなケースでは第2試合に少しでも多くの中継ぎ投手を温存しておくため、勝ち負けに関係なく、少しでも長いイニングを投げることが求められる。
逆に早い回に降板し、中継ぎ投手に負担をかけるようでは、いくら勝ち投手になってもチーム内で信頼を得ることができない。
この試合で8回まで投げ、しかも無失点で勝ち投手になったのだ。こういう投球を積み重ねていくことで、本当の意味で高額年俸に見合うだけの選手としてチームに受け入れられていくことになる。
だからと言って、田中がすでにメジャーの環境に完全に適応できているというわけではないだろう。
4月27日のエンゼルス戦は7回途中まで投げたとはいえ、5四死球が示す通り最後まで制球に苦しんでいた。
それ以前は試合で投げ続けながら、終盤に調子を上げていくような投球を披露してきたが、この日は最後までそれができていなかった。まだまだメジャーでの対処法が確立していない証拠でもある。