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対ダルビッシュ通算7勝1敗の秘密。
アスレチックスが徹底する「待ち」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2014/05/06 10:40
5月1日時点で防御率は2.59と順調なスタートを切っているが、援護もなくまだ勝ち星は1つ。相手チームから対策を練られるエースとして、さらなる飛躍を見せることが出来るか。
ダルビッシュがまたしても、オークランド・アスレチックスにしてやられた。4月28日のことである。4回途中、83球を投げ、4失点で降板し負け投手となった。
これでダルビッシュはメジャーリーグ3年目にして、対アスレチックス戦通算が1勝7敗。昨季からは5連敗ということになる。
実は、スプリング・トレーニングの時に、アスレチックスのボブ・メルビン監督をはじめ、主力選手たちに「ダルビッシュ攻略法」を徹底的に質問してきた。今日はその時の取材をもとに、ダルビッシュという投手を考えてみたいと思う。
ダルビッシュと戦うキーワードは“patience”。
まず、メルビン監督はpatience、打席での我慢強さ、規律を選手に求めるという。
「昨季はダルビッシュに対して4勝したけれど、そのうち2試合は1-0だった。きわどい試合だったんだよ。だから、彼に対する明確な攻略法があるわけではない。ただ、いちばんシンプルなのは序盤に球数を投げさせて降板させ、ブルペン勝負に持ち込むこと。そうすれば勝つチャンスはおのずと高くなる」
メルビン監督は、打席で球を見極めるむずかしさについても話してくれた。
「打席では我慢強く、自制心を発揮する必要がある。手を出したくなる球があっても、序盤は打線全体として相手投手に球数を投げさせる。ただ、これは選手に教えるのが難しい領域の話で、全員が同じように出来るとは限らない。だからこそ、メジャーで教え込むというより、高校、大学レベルからもともと我慢強い選手を見つけて、獲得するようにしているんだ」
アスレチックスが長年、取り組んできたチーム作りが功を奏しているというわけだ。
その代表的な選手が、メガネをかけてプレーするので“nerd”(ニュアンスとしては、「オタク」)と呼ばれ、人気を博している二塁手のエリック・ソガードだ。
「アスレチックスは、ダルビッシュに対して出塁する方法を知っている。もちろん、登板日によって違うけれど、必ずしもすべての球種のコントロールがいいというわけではないんだ」
と話し、自信を持っていた。