サッカーの尻尾BACK NUMBER
グアルディオラが苛立ちを露にした夜。
マドリーにあった“ペップ流”への免疫。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAP/AFLO
posted2014/04/24 12:35
「今日はいい試合だった。次はより改善できると信じている」とセカンドレグへの自信を伺わせるコメントを出したグアルディオラ。
後半なかば、ジョゼップ・グアルディオラが手に持っていたペットボトルを地面に投げつけた。
彼が感情を抑えきれずに激昂するのは稀だ。しかしこの日のサンティアゴ・ベルナベウには、珍しく怒りを露骨に表に出す指揮官の姿があった。
それも理解できる。1-0でレアル・マドリーが勝利したこの試合(グアルディオラにとってはベルナベウで初の敗戦だ)、データを見てみると、バイエルンは試合を通じて70%近いポゼッションを保っている。前半に関しては73%と、力の拮抗するCL準決勝では驚異的ともいえる数字をたたき出している。
バイエルンは圧倒的なポゼッションを武器に、90分間のほとんどの時間をマドリー陣内でプレーした。アラバとリベリーは左サイドを押し込み、右ではロッベンが再三仕掛けた。獲得したコーナーキックの数も15対3と、そこには雲泥の差がある。
バイエルンにはグアルディオラ時代のバルセロナほどのパススピードも、ダイレクトパスの連続もないが、ペップがチームに落とし込んだ前線からの激しいプレッシングでマドリーの中盤を無力化し、ボールを忠実に繋いだ。そこにあったのはペップの哲学そのものだ。
圧倒的に支配しながら、決定機はほとんどなかった。
しかしこの90分間、バイエルンは好機こそ作り続けたものの、それが決定機になることは、ついになかった。
試合後、ドイツの『ビルト』紙は速報でこう報じている。
「73%のポゼッション。9対1のコーナーキック。そんな前半、決定機はひとつもなかった」
グアルディオラが抱えたフラストレーションは、まさにこの点に尽きる。
バイエルン唯一の決定機は、後半にゲッツェがエリア内でシュートを放った場面だろう。攻め込みながらも、バイエルンは最後の局面で崩しきることができなかったのである。ロッベン自身、ドイツのテレビ局『ZDF』に「ゲッツェの決定機を含め、チャンスは2度だった」と話している。