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坪井智哉、米独立リーグで現役続行!
迷える盟友にイチローがかけた言葉。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2014/04/14 11:50

坪井智哉、米独立リーグで現役続行!迷える盟友にイチローがかけた言葉。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

坪井智哉・公式フェイスブックより。「独立リーグの中では最高峰と言われており、メジャーやマイナーとの入れ替えが頻繁に行われているリーグ。少しでも夢に近づく為、このリーグでプレーすることを2年前から望んでいました」と夢へと一歩前進したことが報告されている。

「お前が野球をやりたいんだったら俺はやるべきだと思う」

「色んなことを言う人もいるだろうけど、お前が野球をやりたいんだったら俺はやるべきだと思う。だって、やるのは坪井でしょ。もし、家族が反対したら続けるべきではないけど、奥さんとかなんて言ってるの?」

「嫁さんは『やりたいだけやればいいじゃない。後悔する野球人生だけは送ってほしくない』って言ってくれてる」

「じゃあ、やるべきでしょ。迷う必要なんてないでしょ!」

 '13年は就労ビザ取得の関係で渡米が大幅に遅れた。ホセ・カンセコの双子の兄で、近鉄でもプレー経験があるオジー・カンセコが監督を務めるエディンバーグ・ロードランナーズと契約することができたが、チームの財政難のため給料は大幅にカット。2カ月後には肉離れを起こしてしまいリリースされた。

 過酷な世界に身を投じればこそ、思い通りにいかないことのほうが多いものだ。だが、信念を持ち続けなければ光明を見出せないのも紛れもない事実である。

 新たに契約を結んだ代理人が用意した話は、坪井が待ち望んでいたものだった。

 アトランティック・リーグへの挑戦――。

最もMLBに近いリーグから、世界最高峰の舞台を目指す。

 坪井の話によれば、独立リーグのなかで最もメジャーリーグに近いリーグだと言う。この年、ニューヨークで練習形式のトライアウトに参加した坪井のプレーを見て、「来年、うちでプレーしてみろ」と声をかけてくれたのが、ランカスターだったのだ。

 すでに報道などでも発表されたように、坪井はランカスターの入団がほぼ決まりかけている。だが、苦い経験ばかりしてきた2年だ。昨年9月に左肩を手術した影響もあって、チームからメディカルチェックを強制されるなど油断はできない状況ではある。

 だが、ランカスターでプレーできれば、坪井の念願も現実味を帯びてくるのだ。

 メジャーリーグの打席に立つ――。

 最高峰の舞台に大きく近づいたからこそ、それもやっと口に出せたのだろう。

 坪井は、目標の先に見据える夢を、あくまで謙虚に、しかし力強い口調で語る。

「最終的には『1打席でもいいからメジャーの打席に立ちたい』とは思いますよ。そりゃあ、『何を今さらメジャーとか言うてんねん!』って言う人もいっぱいいるでしょう。だから、僕は声を大にして言っているわけではないし、ブログでも『メジャーリーガーを目指します!』みたいなことは恥ずかしくて書けませんよ。でもね、『そういうおっさんの夢があってもいいんじゃないか?』って思うんです」

 過酷な環境でも常に前を向ける。選手として十分なパフォーマンスを見せられるだけの土台も築いてきた。だから、今でも野球を続けていける。

 坪井智哉、四十にして惑わず――。

 信念を貫けるおっさんは強いのだ。

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