スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
春の椿事とロケット・スタート。
~MLB開幕直後の珍プレー好プレー~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2014/04/12 10:40
「第5の外野手」扱いでスタメンを外れることも珍しくないイチローだが、それでも彼の疾走は続く。
田中将大が初登板・初勝利をあげた。7回を投げて、被安打6、自責点2、奪三振8、与四球0の内容。1回裏、先頭打者のメルキー・カブレラに高めのチェンジアップを右中間に叩き込まれたときはどうなることかと思ったが、3回以降の修正は立派だった。全投球数97のうちストライクが65もあったことは、今後の好材料になるはずだ。
首を寝違えていたダルビッシュ有も、初登板で勝利投手になった。7回を投げて、被安打7、自責点0、奪三振6、与四球1。落ち着き払った態度を見ていると、今年こそサイ・ヤング賞をと、口走りたくなる。
彼らだけではない。上原浩治は4試合に登板して4回を投げ、6三振、0四球、無失点。田沢純一は4試合で4回を投げ、6三振、1四球、無失点。黒田博樹が2試合に先発して12回3分の1を投げ、9三振、1四球、防御率2.92。大方の予想通りとはいえ、大リーグの日本人投手は、今季も安定した活躍を見せてくれそうだ。(いずれも4月8日現在)
イチローも、悪くないスタートを切っている。出番が多くないとはいえ、4試合で13打数6安打。5三振、0四球という数字も彼らしいが、4月3日の対アストロズ戦、ヤンガーヴィス・ソラーテの内野安打で二塁から一挙に本塁を陥れたシーンはさすがだった。
お見合いの間に二塁から本塁を陥れたイチロー。
映像を見逃した方のために状況を説明しよう。7回表、ヤンキースの攻撃は二死二塁で走者がイチロー。打者ソラーテのカウントは3-2。アストロズは、投手がブラッド・ピーコック、捕手がカルロス・コーポラン、三塁手がマット・ドミンゲス。
この状況で、ソラーテは高々と空に舞う内野フライを打ち上げた。二死でフルカウントだから、イチローはもちろん投球と同時にスタートを切っている。
ところが、3人の野手(投手と捕手と三塁手)は全員が空を見上げてしまった。投本間に集まってお見合いをする形になり、真ん中にポトリと落ちた打球を捕手が拾い上げたとき、本塁はガラ空きだった。ひとりぐらいカバーしろよな。イチロー、悠々と生還。
若い選手の多いアストロズの凡ミスとはいえ、これはたぶん、晩秋の〈好プレー珍プレー〉で取り上げられそうだ。イチロー自身も苦笑まじりに振り返るほかないのではないか。
春の椿事といえば、4月4日のクアーズ・フィールドでも異変が起こった。ロッキーズが12対2の大差でダイヤモンドバックスを降した試合で、ロッキーズの1番打者チャーリー・ブラックメンが6打数6安打の大暴れを見せたのだ。