フットボール“新語録”BACK NUMBER
トレーナー・西本直が解説する、
中田英寿や本田圭佑の「背中」。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byYusuke Nishizono
posted2014/04/14 10:30
今年1月に行なわれた新春ドリームマッチ群馬2014に出場した中田英寿。現役を退いても、ドリブル中に背筋をピンと張ったその姿勢は変わっていない。
広背筋がうまく働いている状態が「いい姿勢」。
人間が足を踏み出そうと思ったとき、直接的に関係するのが股関節だ。
股関節というのは大雑把に言えば、分厚い板のような骨盤に、L字型の連結によって足の骨がぶらさがる状態で成り立っている。骨盤が後ろに倒れていると、ぶらぶらできる領域が制限されてしまうので、足を前に振り出しづらくなる。骨盤が後ろに倒れている状態をイメージするには、椅子に足を投げ出してだらしなく座るときを想像すればいい。それに対して、骨盤がしっかり立っていると、足が抵抗なくぶらさがった状態になり、スッと一歩目を踏み出せるようになる。
では、骨盤を立たせるにはどうしたらいいのか?
自然な形でそれを実現してくれるのが、背中にある「広背筋」だ。広背筋は人体において最も大きな筋肉であると同時に、上半身と下半身をつなぐという重要な役目を担っている。広背筋が本来持っている機能を果たすと、骨盤が引き起こされ、その結果スムーズに動けるようになる。
この広背筋がうまく働いている状態というのが、いわゆる「姿勢がいい」状態なのである。
背中の使い方の双璧は、エジルとイニエスタ。
注意すべきは、胸を張れと言っているわけではないことだ。意識して背筋を伸ばした状態はむしろやりすぎで、動きを硬くしてしまう。意識しないでも広背筋が程良く骨盤を引っ張り上げてくれている状態がベストだ(そのためには正しい「動き作り」のトレーニングが必要だ。詳しくは西本のブログを参照)。
Number 842号の企画で西本に映像を見てもらったとき、「背中の使い方」がうまい選手として目に留まったのが、ドイツ代表のエジルとスペイン代表のイニエスタだ。
西本は感嘆しながら言った。
「エジルは走っているときに、ほとんど腕を振っていません。背骨がピンと立って、腕を後ろでぶらぶらしている感じです。そうすると広背筋が骨盤を引き上げてくれるので、足がどの方向にも自然に出て行く。だからボールに追いついたときに、切り返したり、パスを出したり、すぐに次のプレーに移ることができるんです。イニエスタもこの動き方ができている選手。背中の使い方において、この2人が双璧をなしていると思います」