欧州CL通信BACK NUMBER
バイエルンを苦しめた「弱者の戦い」。
フル出場の香川真司が感じたこと。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/04/10 12:25
「ユナイテッドは、ホームの時と同様(GKの)デ・ヘアと8人もの選手で守備を固めていて、ほとんどスペースも無かった。(敵の先制ゴールから)1分ほどで追いつけたことは、運もあったかもしれない」と試合後に語っているグアルディオラ。
ロマンだけでCLの舞台は勝ち抜けない。
自分たちの目指すサッカーによって、うまく相手守備陣を切り裂いてゴールを決めたわけではない。CLの舞台をロマンだけで勝ち抜くのは不可能だ。
この試合では、シンプルなクロスから2つのゴールが生まれた。ただ、そこに至るまでには3月のマインツ戦、8日前の1stレグなど、いくつもの試行錯誤を経ているのだ。これを進化と呼ばずして、なんと呼ぼうか。
後半20分にバイエルンはゲッツェを下げて、右サイドバックのラフィーニャを投入。ラームをボランチに入れて、4-2-3-1へ変更。これにより、安定したボールキープが望めたし、さらに中央の高い位置に入るバイエルンの選手が減ったことで中央にスペースが生まれた。後半31分、右サイドにいたロッベンが中に切れ込んで放った、十八番である左足シュートは、ビディッチの足にあたり、コースが少し変わる幸運にも恵まれ、ゴール左隅へ決まって、3-1。勝負はあった。
香川「いまホントにコンディションはいい」
「(来シーズンは)チャンピオンズリーグに出場できない。願わくば、もう1年たったときに、この舞台に戻ってきたい」
試合後にそう語ったモイーズ監督は、やはり同点ゴールの場面を悔いていた。
この試合の香川は、左サイドのスペースを埋め、ときにラームをケアして、守備では穴をあけなかった。攻撃ではトップ下としてプレーしてチャンスにも絡んだ。労をいとわぬ動きは、チーム最長となる11.8kmの走行距離にも表れていた。
決定的な仕事はしていないが、運動量でチームに貢献した。失点の場面で絡んでしまったが、アシストもした右FWバレンシアとは対照的だ。どちらがチームにとって必要なのか、それは監督によって意見のわかれるところだ。ただ、香川は自分に足りないものをはっきりと見つめていた。
「上に行けば行くほど強烈なものをもっている選手は多いので、やっぱり、あそこ(※ミドルシュートの場面)で意識はしなきゃいけないですね。ただ、いまホントにコンディションはいいと思っているので。次にはまたプレミア(の試合)があるので、もっと、もっと……。ゴールを奪えるかどうかだと思っています」
マンチェスターで始まりミュンヘンで終わったこの準々決勝では、事前の予想を覆して、ユナイテッドが素晴らしい戦いを見せた。だからこそ、バイエルンの強さと進化に光があたる。CLという世界最高の舞台にふさわしい2試合だった。