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バイエルンを苦しめた「弱者の戦い」。
フル出場の香川真司が感じたこと。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/04/10 12:25
「ユナイテッドは、ホームの時と同様(GKの)デ・ヘアと8人もの選手で守備を固めていて、ほとんどスペースも無かった。(敵の先制ゴールから)1分ほどで追いつけたことは、運もあったかもしれない」と試合後に語っているグアルディオラ。
グアルディオラの真髄が凝縮されたゴール。
「得点をとった後のあの時間帯にすぐに失点したのは、すごく……(ダメージが)きたのかなぁと思います」
香川は、そう振り返る。
そして、試合の行方をわけたこのゴールにこそ、グアルディオラがチームにもたらしたものが凝縮されていた。
今シーズンのブンデスリーガで、バイエルンが優勝を決めるまでに最も苦しんだのが、3月22日のマインツ戦だ。リーグでは無類の強さを誇るバイエルンが、後半37分までゴールを挙げられなかった。あの試合のマインツも、この日のユナイテッドと同じように相手のビルドアップを防ぐ戦い方、ゴール前に人数を割いて守備をする戦い方と、両方を用意してバイエルンを苦しめていた。この試合のあと、バイエルンのザマーSDはこんなことを語っている。
「マインツ戦は、ユナイテッドとの試合のための大事なリハーサルになった」
あの試合でもバイエルンは徹底してパスを回したが、なかなか相手の守備陣を崩せずに苦しんでいた。すると、途中出場で右のFWの位置に入ったシャキリがシンプルにクロスをあげ、ゴール前でシュバインシュタイガーが合せてゴールを決めた。
前半だけで541本ものパスを出したユナイテッドとの1stレグで生まれたゴールも、サイドからのクロスをマンジュキッチがファーサイドで落として、中央でシュバインシュタイガーが蹴り込むというシンプルな形だった(※バイエルンのCLでの1試合平均のパス数は790本で、シーズン最高は984本)。
ポゼッションがあるからこそ、クロスが活きる。
「ボールを支配することこそが僕たちのサッカー」
バイエルンの多くの選手たちがそう口にする。
この哲学のもと、細かくパスをつなぎながら相手の守備の穴をつこうとする姿勢があるからこそ、ときにシンプルにクロスを上げると、それが攻撃のアクセントとなる。
マンジュキッチがいるのにもかかわらず、来シーズンからレバンドフスキをとる理由の一つも、パスサッカーを標榜しているからこそ、そこに変化をもたらせるフォワードが必要だからなのだろう。