サッカーの尻尾BACK NUMBER
レアルが0-2敗戦もCL準決勝進出。
ポゼッションスタイル、未だ完成せず。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2014/04/09 11:20
ロナウドが出場しなかった2ndレグを0-2で落としたが、初戦の3点のリードで辛くもレアル・マドリーが準決勝へ。厳しいコンディションの中で、リーガ、国王杯、CLの三足の草鞋をはくマドリーの命運は。
勝者の表情には疲労感、安堵、不安が浮かんでいた。
マドリーの中盤は高い位置から寄せてくるインテンシティの高いドルトムントに完全に制圧され、イジャラメンディは何もできない。不用意なバックパスで失点に繋がるミスも犯し、前半だけで交代することになった。
イスコ投入後はベイルを右に、イスコを左に配しやや改善するも、しばらくすると再びドルトムントのリズムに。結果的に0-2で終わり突破は決めたものの、敗戦にもすっきりした表情さえあったドルトムント陣営に比べ、マドリー側には疲労感と安堵、そしてこのままで大丈夫だろうかという、不安のようなものさえ見えた。
試合後、マドリーの選手の口からは反省の声ばかりがでてきた。リーグ戦では控えの主将、カシージャスは言う。
「今日は苦しみすぎた。30分で0-2というのは厳しい。準決勝ではこんなミスをしているようではダメだ」
中盤で唯一気を吐いたモドリッチは、「前半は何が起こったか分からない。第1戦の3-0に油断していたのかもしれない。こういった試合で学んでいくものとは言うけれど、いつになっても僕らは学ばないみたいだ」と手厳しい。セルヒオ・ラモスも「突破には満足しなきゃならないが、前半の出来は考えものだ」。
試合後の勝者は、誰も満足していなかったのである。
進化のために求めたポゼッションは、まだ発展途上。
スペインメディアの中には、この敗戦を左膝の違和感で欠場したロナウドの不在に結びつける向きもあるが、それは間違っている。彼がいればカウンター時のチャンスを得点に結びつけることはできたかもしれないが、試合展開自体は変わらなかっただろう。
モウリーニョ時代の激しさ、インテンシティが薄れつつある点にも不安がよぎる。ケディラやペペを中盤の底に置くことも多かった前任者のチームはよりアグレッシブだった。しかし現チームはポゼッション志向が強く、大一番での堅実さや勝負強さを欠いている。結果としても、リーガではホームでバルサに敗れ3位に後退し、自力優勝は消えた。進化しようとして求めたポゼッションは、現段階ではまだまだ完成されていない。ドルトムントを前に、それは明らかになった。