MLB東奔西走BACK NUMBER
ジェイミー・モイヤーと大塚晶則。
復活にかけるベテラン投手のド根性!
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/01/12 10:30
2006年、第1回WBCでは優勝投手となった大塚晶則。大会ではクローザーとして5試合に登板し、日本の優勝に大きく貢献した
2010年が終わりを告げようとしていた12月下旬、MLB公式サイトにメジャー現役最年長投手の決意表明がアップされていた。
11月18日に48歳を迎えたジェイミー・モイヤーだ。
彼の立場を正確に表現するならば現役最年長“だった”投手であり、現時点では所属先のないFA選手でしかない。
昨シーズンは途中からヒジ痛に悩まされ、7月20日以降は登板機会のないままシーズンを終え、フィリーズから戦力外通告を受けていた。そして、その直後に左ヒジのトミー・ジョン手術(いわゆる腱移植手術)を受けることを発表し、手術は12月に無事終了。その上で改めて現役続行の意思表示をしたのだ。
「49歳で働き場所を探すのは困難かもしれない。だが自分の置かれた立場は理解しているし、たぶんキャンプも招待選手として参加することになるだろう。自分自身はそれでまったく問題がない」
モイヤーが受けた手術は、どんな選手でも復帰まで1年以上要するという大手術。本人も復帰まで12~18カ月かかると見込んでいるように、2011年シーズンをリハビリに費やしたうえでの現役復帰を目指しているのだ。
自分を厳しく律するモイヤーだから下せた、復帰への決意。
モイヤーが下した決断は生やさしいものではない。
すでに引退していてもおかしくない年齢であり、若手選手と比べれば身体の回復能力は否応なしに低下、左ヒジが期待通りに回復するという保証はまったくない。また体力的にもピークを過ぎており、体力維持の面でも1年間グラウンドから離れるというリスクは計り知れないほど大きいだろう。
そんな先の読めないリハビリを続けるというのは、精神的にも相当苦しいものになるだろう。だが、メジャー通算267勝の鉄腕は自信を覗かせる。
「自分の野球人生は常に自分で切り開いていくしかなかった。今回だって人に何かをしてもらおうなんて期待もしていない。ずっとそうやってきたのだ」
球界でもかなり非力で華奢な体格。図抜けた球威や球種もあるわけではなく、23歳でメジャー昇格してからもしばらくは思うような成績を残すことができなかった。だが、三十代半ばになってから打者の打ち気をそらす独自の投球術を見出し、38歳、40歳のシーズンには年間20勝以上を達成。その言葉通り、モイヤーは自らの力で現在の地位を築き上げてきたのだ。
その実績に裏づけられた固い信念があるからこそ、今回の決断が生まれたのだろう。取材で話を聞いていても、モイヤーほど自分を厳しく律することができる選手はメジャーでもそう多くはいないだろう、と感じさせるほどの実直さなのである。