オリンピックへの道BACK NUMBER
上村愛子、全力を尽くし笑顔の4位。
5度目の五輪は、成熟した人間として。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/02/09 11:45
演技を終え、ライバルたちと健闘を称えあった上村愛子。メダルに手は届かなかったが、その表情に後悔の色は全くなかった。
やりきった。
滑り終えた瞬間、思わず、そんな言葉が浮かんだ。
2月6日の予選1回目で、上村愛子をはじめ上位10名が決勝進出を決めた。そして2日後の2月8日、モーグルは予選2回目そして決勝を迎えていた。
予選2回目で村田愛里咲が20名の決勝進出者に名を連ねたが、その中から12名に絞られる決勝1回目の直前練習で転倒し、棄権。日本勢は上村のみが出場することになった。
その1回目で上村は9位で決勝2回目に進むと、6位までが先に進める2回目は6位で勝ち残り。
そして6名によるスーパーファイナルが始まる。順位が一番下の上村が最初にスタートを切った。
その滑りには、はじめから攻めていこうという意識が感じられた。ためらいも、余計な緊張もなかった。この日3度目の滑りである疲労も見せない。2つのエアもしっかり決めると、両手をあげてゴール。
上村は笑顔でありながら、涙を流していた。得点が出る前にだ。試合後、この場面の心境をこう振り返っている。
「いい滑りができてよかったなと思って」
最終滑走者の点数が出た瞬間、上村の4位が決まった。
続く2人の選手は上村を下回り、残り3名を残して1位。カナダのジャスティン・デュフォー ラポイント、クロエ・デュフォー ラポイントの姉妹が上回り、上村は3位となる。残るはハナ・カーニーのみ。バンクーバー五輪金メダルをはじめ、数々の実績を持つ第一人者である。
だが、カーニーはコブに弾かれ、ターンが乱れる。それは誰の目にも明らかなほどだった。
滑り終えたカーニーの得点と順位が出る。3位。その瞬間、上村の4位が決まった。