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<3度目の五輪で頂点を> 加藤条治 「金メダルへの“壮大な実験”」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/01/28 06:15
ひと言やふた言で言い表せないことに取り組んでいる。
――実に細かく、そして壮大な実験を行なっている。
「確かにいろいろやっています。でも、そのことについては、しゃべるつもりはないんです。感覚勝負でやっているので、無理やり言葉にすると自分の感覚とズレていくことがある。僕は自分の感性を大事にしたい。だから、言葉にしづらいことはしなくていいと、今は考えています」
――それだけ感覚の幅が細かいということでしょうか。
「そうです。やりたいことのほうが言葉よりも細かいし、情報量が多い。ひと言やふた言では言い表せないことに今、取り組んでいる。簡単に人に説明できるような感じではないんです」
長島さんがいることで、世界での自分のレベルが分かる。
――天才肌と言われてきた加藤選手ですが、自分を世界へと押し上げているのは何であると考えていますか。
「何も考えてないように見えて、実際は人よりも相当考えてやってきたと思いますよ。スケートが好きで、常に研究している、という姿勢とは違うのですが、例えば筋トレなら、今どの筋肉を鍛えているのか、どうすればうまく鍛えられるのか。滑っているときなら、どうすれば氷に伝える力を推進力に変えられるのか。重要なところだけは押さえてやっていると思っています。そうじゃなきゃ、小さくてスケートも下手な自分が、こんなに速くなるわけがないですから」
――仲間であり、最大のライバルの一人でもある長島選手の存在も大きいのでは?
「練習は別々ですが、長島さんがいることで、世界の中での自分のレベルが分かります。長島さんに負けると、五輪で金メダルを狙うと言っている選手が国内で2位なのか、となってしまうのですが、やっぱり、僕の調子が悪い時に表彰台に立ってくれるのは助かりますね。僕の成績が悪くても日本の名誉を守ってくれる。今年は特にそう感じています。責任が一人にならないので、変なプレッシャーがかからない」