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ミランを救う終了間際の初アシスト。
本田圭佑は“あきらめない日本人”。
 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byGetty Images

posted2014/01/27 11:50

ミランを救う終了間際の初アシスト。本田圭佑は“あきらめない日本人”。<Number Web> photograph by Getty Images

初のフル出場でチームを救う初アシストを見せた本田圭佑。ミランの命運は、本田率いる攻撃カルテットに託された。

決定機を外すミランの10番に、敵地のブーイングが。

 監督セードルフは、4人の攻撃陣へ「前線からのプレスを徹底せよ」と指示していた。1トップのFWバロテッリをはじめ、しばしば本田も自陣まで下がり、守備にも力を割いた。

 だからこそ、28分にGKアメーリアが犯した不用意なミスからの失点が、チーム全体の急激な士気低下を招いてもおかしくはなかった。

 それでも、ミランのカルテットは攻め続けた。

 DFデシーリオからの右クロスにうまく合わせた39分の本田のヘディングシュートは、運悪くGKの正面でパンチを合わせられたが、ミートしたタイミングは完璧だった。

 54分、右サイドでボールをキープした本田からMFカカ、FWロビーニョと繋いで、ゴール正面に入ったFWバロテッリのシュートへの流れも見事だった。

 その5分後には、FWロビーニョとのコンビで中央を突破した本田が今度は左足で狙うものの、シュートはクロスバーを越えた。またも決定機を外したミランの10番には、敵地のサポーターから盛大なブーイングが飛んだ。

 ミランの中盤はパスを3本と繋げず、スピードのないセンターバック2人の反応は後手後手で、カリアリのカウンターにあわやの場面を何度も作られた。

初アシストのCKは鋭く、どこか優しかった。

 指導者歴2週間足らずのセードルフは、60分にFWパッツィーニを1トップに入れ、FWバロテッリを2列目の左にスライドさせた後、センターハーフとサイドバックでそれぞれポジションの重なる選手たちを交代で入れ替えた。意地でも4-2-3-1の形は変えず、カルテットを信じようとした。

 敗色濃厚かと思われた87分、ゴール左前のFKをFWバロテッリが直接叩き込み、ミランは同点に追いついた。

 土壇場でなおも攻め続けたミランに89分、右CKのチャンスが訪れた。

 ボールをセットした本田は、ボールのミートポイントを凝視し、左足を振りぬく。

 10番を背負う日本人MFが蹴ったボールは鋭く、どこか優しく、ニアサイドに構えていたFWパッツィーニの眼前に届いた。高く上げた右足トゥキックから放たれたボールは、ゴール右隅に納まった。殊勲のパッツィーニを下敷きにした歓喜の小山が、ミランのベンチ前へ瞬く間に積みあがった。

 本田だけは一人離れ、ベンチと逆方向へ向かった。ミラン加入以来、ミラネッロで練習をサポートしてくれたトレーナーと思しきチームスタッフに駆け寄り、初アシストの喜びの抱擁を交わした。

【次ページ】 試合後のセードルフが浮かべた、複雑な笑顔。

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