スポーツ百珍BACK NUMBER
高校選手権で輝いた新星を総まとめ。
プロ、大学での彼らの可能性は?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2014/01/15 16:30
京都橘の小屋松知哉は、U-18日本代表にも選ばれる世代を代表するストライカー。入団する名古屋は永井謙佑ら選手層が厚いが、活躍を期待せずにはいられない。
昨年の得点王、小屋松は徹底マークに抗った。
その石田を擁する市立船橋と準々決勝で対決した京都橘の小屋松は、この試合で2得点を挙げるなど俊足を生かした突破と冷静な決定力が魅力のアタッカー。昨年度の選手権では5得点を挙げて2年生ながら大会得点王に輝いたが、今年は新たな引き出しを増やした印象があった。最上級生となったこの1年、そして今大会でも相手チームの徹底マークに遭った。準決勝でも星稜(石川)の厳しいディフェンスの前に無得点、チームは0-4で敗戦して涙をのんだ。しかし、本人が試合後に1年間での成長について問われると、こう口にした。
「(今日の試合では)チームを勝たせるために焦ってしまった部分が残りましたが、周りを生かすプレーに関しては成長したと思います」
その意識の一端が見えたのは24分のこと。ハーフライン左寄りでボールを受けて、星稜の守備陣2人に挟み込まれる状況となった。
だが小屋松は即座に中央にパスコースを見つけ出して展開。自身が相手を引きつけたことによって生まれたスペースに味方が走り込むと、ボールは一気に右サイドへと渡ってチャンスを創り出した。小屋松はパスを出した後のスプリントを怠らず、最終的には右からのクロスに飛び込み、ファーサイドの選手をフリーにする“囮”の役割までこなしたのだ。徹底マークを講じた星稜の河崎護監督は選手に「小屋松君が持ったケースでは、彼には1枚(マークを)剥がされると思ってプレーしよう」と伝えたそうだが、複数人を無力化したプレーは非常に上質だった。
メンタルでも成長を見せ、プロを見据える。
小屋松はメンタル面でも目を見張るものがあった。
「サッカーだけではなく、1人の人間としてどういう振る舞いをするか」
という点を念頭に置き、主将の重責を務めた。思わぬ大敗を喫した星稜戦の終了直後にはピッチで涙を流したものの、MIXゾーンでは筆者を含む多くの報道陣に囲まれながらも凛とした姿勢で対応した。
「キャプテンとして背負うものがあったので少し休みたいですが(笑)、次のステージに向けて準備をしていきたいと思います。ただ、プロに入るとまた一番(年齢が)下になります。プレー全体のスピードアップをしないといけないですし、先輩選手のいいところを盗んで持ち味を発揮したいです」