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個々の能力差をチーム戦術で覆す!
スケート界がメダルを託すパシュート。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byPro Shots/AFLO
posted2014/01/12 08:11
今季はW杯でも好成績を残している日本チームの菊池彩花、高木菜那、田畑真紀(右から)。
代表選考会が終わり、スピードスケートのソチ五輪日本代表が決まった。
今回の代表選考では、メダルや入賞の可能性が選考に大きく影響した。その一つが、バンクーバー五輪で銀メダルを獲得した女子のチームパシュートを重視した選考である。
今回、パシュートに適した中距離である1500mの代表に、日本が持つ上限の4枠いっぱい、田畑真紀、菊池彩花、高木菜那、押切美沙紀の4選手を選んだのである。女子全体で日本代表枠は10名までとなっているため、結果として500、1000mでの4枠を使い切らない選考となったが、バンクーバーに続くメダルを、さらに上を、という意志がそこに表れている。今回の選考に限らず、ソチをにらみ、強化に取り組んできた。
一人が速くても勝てない、チームとしての戦い。
チームパシュートは、1チームあたり3人1組となり、対戦形式で行なわれる。リンクの2つのストレートラインそれぞれから対戦する2チームがスタートし6周。3人目の選手のブレードの後ろがゴールしたときのタイムによって、勝敗を決する。つまり、誰か一人が速ければいいわけではない。
それがチームパシュートならではの戦略を生む。どのチームも、3人が1列となり、先頭を交代しながら走るのがこの種目の風景だ。先頭の選手は空気抵抗によって消耗する。そのため、かわるがわる前に立つことで、個々の負担を減らすのだ。
3人そろって走るため、先頭を交代するときのタイミング、スムーズにかわれるかなども影響してくるし、交代するときの減速も避けたいところだ。さらに、うまくいかなければ転倒というケースも出てくる。
この種目が正式に採用されたトリノ五輪で日本女子は4位となり、バンクーバーでは銀メダルを獲得。しかしその後成績が伸び悩み、昨シーズンの世界距離別選手権では7位にとどまった。
6周、つまり2400mの距離だけに中距離種目に強い選手が多ければ有利だが、日本は個々の能力で抜きん出た選手がいるわけではない。ではどこで差を埋めるか。そう考えたときに浮上したのが、チームとしての戦いを極めるということだった。