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7つの言葉で振り返る2013年事件簿。
これがF1界の「流行語大賞」だ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAP/AFLO
posted2014/01/04 08:01
前輪を軸に、その場でくるくると車体を回すドーナツターンを披露するベッテル。路面との摩擦で出る煙は、今季の風物詩となった。
勝ちすぎたベッテルへのブーイングの嵐。
(4)「ブーイング」
ベッテルが連勝をスタートさせた後半戦のベルギーGPあたりから、表彰式でベッテルに向けられて起きた現象。フェラーリの地元モンツァで行なわれたイタリアGPがもっともひどかったが、ベッテルがもっともショックを受けたのは、遠征ラウンド緒戦となったシンガポールで受けたブーイングだった。後日、そのブーイングを行なったファンは、ベッテルに謝罪。その後、ベッテルへのブーイングも鳴り止んだが、ベッテルの連勝は止まらなかった。ブーイングはベッテルではなく、ベッテルの独走を許したライバルチームに向けられるべきだったのではないだろうか。
(5)「いちいち、怒鳴るな!!」
2012年も「自分のやるべきことはわかっている」という名言を語ったキミ・ライコネンが、2013年のインドGPのレース中に発した言葉。チームメートのロマン・グロージャンを前に行かせるために、4文字言葉で「どけよ!!」と言われたライコネンが、4文字言葉を使って応戦した。
その後、ライコネンは「チームから1ユーロももらっていない」という告白をして逆襲に転じた後、終盤2戦を手術のために欠場。手術したのは本当だったが、いまだに契約金がきちんと支払われていないことも事実である。その事実を教えてくれたチーム関係者でさえ、「だって、私もまだもらうべきギャラを頂いていないんだから」と密告してくれた。
(6)「ドーナツターン」
ベッテルがタイトルを決めたインドGPで披露。その後も連勝していったアブダビGP、アメリカGP、ブラジルGPでも行なって、終盤戦の風物詩となった。ブラジルGPを除けば、どれもヘルマン・ティルケがデザインした近代的なサーキットで、ラン・オフ・エリアが広いという共通点があり、アブダビではベッテルだけでなく、ウェバーも同じ場所で派手に回っていた。
最終戦のブラジルGPではコース幅が広いインテルラゴスの最終コーナー付近で、フェラーリでのラストランとなったフェリペ・マッサもドーナツターンしていた。F1を引退するウェバーもドーナツターンするかと思われたが、ヘルメットをかぶっていなかったため断念。ウェバーといえば、シンガポールGPでは他人のマシンに乗ってピットに帰ってくる、いわゆる「タクシー乗車」を行なって罰金を受けていた。古き良き時代を知るドライバーがまたひとり去った。