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病院前に続々とファンが集合。
頑張れミハエル・シューマッハー!! 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2014/01/11 08:11

病院前に続々とファンが集合。頑張れミハエル・シューマッハー!!<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

シューマッハーが入院する病院の前には多数のファンが集まっている。夜になると病院の壁面には“45 - Schumi Stay strong! Keep fighting!(45歳、シューマッハーはまだまだ強い! 頑張れ!)”というライトアップが。

「ヘルメットをかぶって、マシンに乗ってしまえば、私たちドライバーにはモータースポーツが危険だと意識することはない。なぜなら、バイザーを下げたとき、コクピットの中で僕らが満足感を得られる唯一の瞬間は、マシンを限界で走らせたときだから。

 レーサーにとっての快感は、マシンを極限の状態で走らせること。確かにモータースポーツは危険だし、ほかのスポーツより大きなリスクが伴う。でも、F1は世界で最速の自動車レースであると同時に、優れた安全性を構築しているスポーツでもある。新設されるサーキットは、広大なランオフエリアが多く設けられていて、安全基準は非常に高い。もちろん、それでも危険を100%回避することは不可能だ。でも、人間が生きていく以上、どんな場面であっても危険は伴う。生きていく以上、絶対的な安全を望むのは不可能だ」

 これは、2011年にインディカー・シリーズでダン・ウェルドンが壮絶な死を遂げ、その1週間後に2輪のMotoGPでマルコ・シモンチェリが悲運な死に見舞われた直後に行われた会見で、ミハエル・シューマッハーが語った言葉である。

 史上最多の7度のタイトルを獲得し、皇帝と称されるシューマッハーですら、19年間のF1生活ではさまざまな危険に遭遇してきた。その中で、もっとも大きな代償を払ったのが、'99年の第8戦イギリスGPでの事故である。

「突然意識が薄れて、目の前がぼんやりと暗く……」

 ブレーキのメカニカルトラブルによって、減速しきれずにコーナーを直進したシューマッハーのマシンは時速100km以上のスピードでタイヤバリアに正面からクラッシュ。その際の衝撃は50G以上だったといわれている。

「突然意識が薄れて、目の前がぼんやりと暗くなっていった。まるで部屋のライトが1つずつ消えていくようにね。そのとき、『天国へ行くときというのは、こんな雰囲気なんだろうな』という思いが頭をよぎったのを覚えている。でも、ちょっと気を失っただけで、すぐに目が覚めて、あれは夢だったんだってわかったよ」

【次ページ】 シューマッハーの記憶に残る「あのレース」。

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