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楽天が20億円以上を手にする“秘策”。
「パッケージ・ディール」って何?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAP/AFLO
posted2013/12/19 11:35
MLBとのミーティング後に、米メディアに田中投手の移籍について語る立花陽三球団社長。ゴールドマン・サックス、メリルリンチなどに在籍したビジネスマンの本領を見せられるか。
いかにもアメリカらしいアイディアだと思う。
これはアメリカで「パッケージ・ディール」と呼ばれ、メジャーの球団がラテンアメリカ地域の選手と契約する際に用いられる手法だと紹介されている。
つまり、楽天はもうひとりの選手をポスティング公示することで、損益を少なからず抑えられる可能性がある、ということだ。
いかにもアメリカらしいアイディアだと思う。
こうした方法が道義を重んじる日本球界で認められるかどうかは、別の問題である。田中と組まされた選手の立場はどうなるのか? 日本は人事に関してなかなかドライにはなれないから、そうした部分にも一定の配慮は必要となるだろう。
楽天は現状として新ポスティング制度の検討を重ね、「田中を放出することになった場合、損失を最小限にするためには、どんな方法があるのだろうか?」と様々な可能性を検討しているのではないか。
単に時間を延ばしているのではなく、ビジネス上の理由で、時間を必要としているように思えるのだ。
「やられたら、やり返す」という発想もあっていい。
今回のポスティングをめぐる交渉では、日本の球団だけが煮え湯を飲まされ、大きな譲歩を迫られることになってしまった。
しかしバドラー記者の示唆する方法を読むと、野球ビジネスの上で「やられたら、やり返す」発想があっていいと思う。
楽天の経営陣には、野球畑出身ばかりではなく、金融界など他業種からの出身者もいる。様々な方法を検討した上で「こんな方法があったのか!」と唸らせるような、創造性あふれるアイディアが出てくる可能性もある。
田中の気持ちを「預かっている」間も、楽天の経営陣はフル稼働していると見るべきだろう。