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元選手にして俳優の和田正人が選ぶ、
忘れられない箱根の名勝負とは?
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byMasato Wada
posted2013/12/28 08:01
日本大学時代には、復路の主要区間である9区を2度走るなど、チームの主軸として活躍した和田正人さん。
残り1.5km地点で待ち構えていた、更なるドラマ。
圧倒的な実力差がある両者の間で、まさかこのようなデッドヒートが繰り広げられるとは思いもしませんでした。幾度にもわたるスパートで、遂には大村選手が実力者である奥田選手を突き放したのです。差は一気に広がり、このまま法大が逃げ切るかと思いました。
ところが残り1.5km地点で、更なるドラマが待ち構えていたのです。3位を走っていた中大・藤原選手が、先ほど突き放した順大の奥田選手を引き連れて、先頭に追いついてきたのです。
藤原選手は区間記録保持者としての意地。
奥田選手は優勝候補チームとしての意地。
そして大村選手には、最後の箱根駅伝という想いがあります。
それぞれの想いとプライドを賭けた、まさに箱根史に残る名勝負だったと思います。
最終的には、区間記録保持者としての意地が勝り、藤原選手が2選手を振り切って、37年振りの往路優勝を中大にもたらしました。
2位は順大。ここまで大健闘した法大は、残りの1.5kmで力尽き、トップから55秒差の第3位でした。
大村選手に教わった、箱根を走るランナーの在り方。
当時、直前のケガで出場を断念した僕は寮のテレビで、このつばぜり合いを観ていました。箱根駅伝を走れない悔しさも当然のことながら、無名のランナーがこのような無謀にも見える勝負に挑み、誰もが想像していなかった劇的な走りを見せた。そのことに衝撃を受け、何よりも「悔しい」想いをしたのを覚えてます。
たとえ目の前の敵が自分よりも圧倒的な強者であっても、ゴールするまで勝負する……。3位でゴールする大村選手が、短距離選手のように胸を突き出してゴールする姿を見て、箱根駅伝を走るランナーの在り方を教わった気がしました。