スポーツのお値段BACK NUMBER
中西理事が語るJリーグの“懐事情”。
世界とアジアの市場に宣戦布告!
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKyozo Hibino
posted2013/12/06 10:30
Jリーグが世界と伍していくためのステップを教えてくれた中西大介理事。
まずはアジアマーケットの拡大が第一歩。
並木 具体的には、どういうことでしょう?
中西 普通、リーグやクラブの収入は、放映権料やスポンサー、入場料といった分け方をしますよね。でも、ちょっと見方を変えると、国内マーケット、大陸マーケット、世界マーケットという分け方もできる。ヨーロッパの主要クラブは、入場料などの国内市場はもちろん確保したうえで、海外では放映権を売り、大陸の大会であるUEFAチャンピオンズリーグで上位進出することで多額のボーナスも得ている。要するに、3つのマーケットからまんべんなく稼いでいるんです。
僕らとしては、プレミアのように世界中に放映権を売って儲けようというのではなく、大陸(アジア)のマーケットを大きくすることがファーストステップだと考えています。そして将来的には、そこからJリーグの利益になるものを取り込んでいきたい。だからこそ、まずはヨーロッパへ流出しているお金の流れを何とかしてせき止めたいんです。
ベトナムのレコンビン選手は、中田英寿と同じ。
並木 なるほど。Jリーグのアジア戦略とは、本来は自分たちのモノを取り返す戦いなんだ、と。
中西 そう。僕はヨーロッパに流れ出ている資金のうち10%でもアジアの中で回るようになるだけで、相当変わるはずだと思っています。そのためには、とにかくアジアの中で国境を越えて選手とお金が行き交う環境を作らなければいけない。
ベトナムからコンサドーレ札幌に加入したレコンビン選手は、その先駆け的存在です。東南アジアのトップ選手がいきなりプレミアで活躍するというのは、今はまだ現実的ではないでしょう。しかし、Jリーグはいわば「ジャパニーズ・ドリーム」を実現する舞台になり得る。中田英寿がセリエAに渡った時、皆さんがテレビに釘づけになったのと同じように、ベトナムの国民はレコンビンの動向に熱い視線を送っている。当然、ベトナム国内でのJリーグの露出は増えましたし、コンサドーレにはベトナム企業のスポンサーも入り始めています。
「インドネシアのメッシ」と呼ばれている選手が、山梨県の招待でヴァンフォーレ甲府の練習に参加した例もあります。練習試合でゴールを決めたら、インドネシアではビッグニュースになった。そこで同時に、その選手が山梨県内でブドウ狩りをしている写真も報じられて、山梨はブドウが美味しいところなんだというPRまでできた。アジア戦略は、こうした地域興しにもつながる可能性を秘めている。