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中西理事が語るJリーグの“懐事情”。
世界とアジアの市場に宣戦布告!
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKyozo Hibino
posted2013/12/06 10:30
Jリーグが世界と伍していくためのステップを教えてくれた中西大介理事。
2ステージ制で、どの程度の収入増が?
並木 アジア戦略と同時に、国内マーケットの拡大にも努める必要があると思います。2015年から導入される2ステージ制では、どの程度の収入増を見込んでいますか?
中西 およそ10億円は確保できる見通しです。このデータ(表4)が示す通り、Jリーグの事業収入は2009年をピークに減少傾向にあって、来年以降も10億円単位で減ることが予想されていた。クラブへの配分金を維持しようと思えば、減収のシワ寄せを食うのは強化・育成などに充てる戦略投資予算です。
これは各クラブによる地元レベルでの活動とは違って、全国規模で行なうアカデミーなどの原資になるもの。だけど僕は、こうした将来への投資をカットすることは非常に危険だし、絶対に避けるべきだと思った。だから短期的に収益を増やす方策として、2ステージ制はどうしても必要だったんです。
並木 今年、プロ野球の日本シリーズがそうだったように、盛り上がるといいですよね。
クラブの個性がお金を払う「物語」を生む。
中西 これまでのJリーグは「市民に愛されるクラブ」という一つの方向を目指してやってきた。それは確かに良いことだけど、一般の人が抱くクラブごとのイメージに差がないという課題も生んだ。有料放送を見たり、スタジアムに行ったりという形で人がお金を払うのは、「物語」を買うということですよね。でも各クラブの個性が乏しい現状では、どんな物語なのかがなかなか見えてきにくい。そういう意味ではポストシーズンを設けることで、多くの人が感情移入しやすい舞台装置として機能するはずです。2ステージ制に賛否はあると思います。大会方式の変更だけが改革の全てではありません。きっかけ、スターターなのです。収入が微減傾向にある中で手をこまねいて見ているわけにはいかなかった。微減しているのに何も手を打たないというのが一番怖い。僕はギリギリのタイミングだと判断しました。