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猪苗代大会、返上から一転、開催へ。
モーグルW杯を国内で開催する意義。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/10/22 10:30
今年2月の猪苗代のデュアルモーグルW杯で初優勝した伊藤みき。
日本だと「いいところを見せよう」と思う。
また、日本代表選手をはじめ、世界のトップクラスの選手が集まる大会を間近で観ることが競技を志すきっかけにもなる。
現在は全日本スキー連盟の強化本部長を務める古川年正氏は、以前「トップ選手への憧れから自分もやろう、強くなろうと思うものです」と実感を込めて語っていた。そしてそれはスキー競技に限った話でもない。
上村愛子も、かつてこんなことを言っていた。
「やっぱり日本だと、『頑張っていいところを見せよう』という気持ちにもなりますし、いいところを見てもらうことで、見てもらう機会があることで、モーグルに注目してもらったり、これからにもつながっていくと思うんです」
ましてや猪苗代は、過去15度にわたってワールドカップが開催され、世界選手権も実施されたことがある町である。さらに、大会の会場となっているリステル猪苗代は若い世代の育成にも長年にわたり力を注ぎ、今日もトップクラスの選手のみならず、多くの選手が練習に利用している。それを知るからこそ、モーグルの選手に「聖地」と呼ばれるのだ。
そうした場所から、毎年のように行なわれていた大会が消えることは、大きな意味で競技へのダメージとなるし、だからこそ、最後は猪苗代町も援助に踏み切ったのだろう。
競技人口をいかに回復させるかが、競技の活性化やトップのレベルを押し上げることになるだけに、その方策は別途講じていかなければならない。
それでも、失いかけていた「財産」を失わずに済んだことは、まずは朗報だと言えるのではないか。
無事、開催されることになった大会での日本勢の活躍を期待したい。