フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
アメリカGPに舞った2枚の「日の丸」。
浅田と町田のW優勝でシーズン始動!
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2013/10/22 10:31
優勝した町田は、「自分から勝ちを狙いにいって、自分の力で優勝をつかむことができたのは、本当にうれしい。4回転ジャンプの調子はよくなかったが、これからも続けていきたい」とコメントした。
「大敗の後、スケートの原点に戻った」
昨シーズンは中国杯で初のGPタイトルも手にし、初めてGPファイナルにも進出した。しかし全日本選手権では失速して9位。世界選手権の代表も逃した。
それが今シーズンはジャンプが見違えるほど安定した。その裏には、スケートの原点に立ち返るトレーニングがあったのだという。
「4月に2年間トレーニングした米国を後にして、大阪にトレーニング拠点を移しました。スケートの原点の基礎に戻ろうと思い、毎朝5時前に起きて、1時間か2時間、コンパルソリー(規定演技)をやっていました」
それによって体の状態に対してより敏感になり、エッジに正確に乗れるようになった。ジャンプやスピンを失敗しても、自分の体がどのような状態にあったのか、常に把握できるようになったのだという。
「昨年の(全日本での)大敗がなかったら、基礎に戻ろうという気にはならなかっただろうと思います。あの失敗があったからこそです」
コーチのアンソニー・リュウは「タツキには前から能力があった。足りないものは、自信だけ。そのことを前からぼくはずっと言い続けていたんです」と笑顔で語った。
「今シーズン、ようやくすべてが一体化して結果になったのだと思う」
ソチ五輪の代表争いは、まだ始まったばかり。
それでも町田は、まだ自分が日本男子のトップ扱いをされていないことを自覚している。
この試合では高橋、小塚のトップ2人はいずれも本来の演技を見せることができずに、4位と6位に終わった。だが2人はいずれも世界選手権の表彰台に立ったことのある選手。この1試合だけで、その評価が覆されたとは思っていない。
「今の自分はまだ、五輪代表選考からはもっとも遠い位置にいると思っています。でも五輪に絶対に出るんだという強い気持ちを持って、このシーズンを戦っていきます」
現在の日本男子は、世界のトップで戦う実力のある選手が5~6人いる。その中で3枠しかない五輪代表の座を射止めることができるのは誰なのか……。
まだまだ戦いは始まったばかりだ。