セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
トッティらが躍動し開幕7戦全勝。
新監督のもと変貌したローマに期待。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/10/08 10:30
ダービーで怨敵ラツィオを撃破したローマ。ガルシア監督(左から2番目)は、デロッシ(左から3人目)、トッティ(左から4人目)らと歓喜のラン&ジャンプの輪に加わった。
新参の監督が、アクの強いベテランをまとめた手法。
開幕前に、セリエA初挑戦のガルシア率いるローマへかけられていた期待は、決して芳しいものではなかった。
シーズン始動日にトリゴリア練習場へ集まったチームを待ち受けていたのは激励の拍手ではなく、怨敵ラツィオに敗れた昨季のコッパ・イタリア決勝戦での失態をはじめ、近年の低迷に憤慨する300人のロマニスタたちによる猛抗議だった。短いプレシーズンキャンプの間にも、抗議の声と懐疑の目は注がれた。
しかし、平常心を保った指揮官はチーム作りに集中した。新旧分け隔てなく選手たちと対話を重ね、彼らとの距離を縮めることに腐心した。特に、トッティとデロッシの生え抜き2人を始め、デサンクティスやマイコンら経験豊富な選手の意見を尊重した。
新参の指導者がローマで結果を出すには、他の選手たちへ強い影響力を持つトッティとデロッシを増長させることなく、気持ちよくプレーさせる術を知らなければならない。過去の前任者たちが陥った失敗を繰り返すことなく、ガルシアはアクの強い古参のベテラン組と野心に燃える新加入選手たちを試合毎に1つにまとめ上げていった。
ダービーの勝利で、チームは一体感を手に入れた。
選手たちが今季のチームへ確信を持ったのは、4節での大一番、ラツィオとのローマ・ダービーだった。
「ダービーは、プレーするものではない。勝つものだ」
指揮官の激励を受けたチームは2-0でライバルを撃破。4カ月前のコッパ・イタリア決勝での無念を晴らす会心の勝利に、先制点を決めたバルザレッティは感極まって号泣した。“有言実行”を果たした指揮官はデロッシに促され、ゴール裏席へ向けた歓喜のラン&ジャンプの輪に加わった。勝ってもニコリともしなかったゼーマンが率いた時代には考えられなかった光景だ。
ダービーでの勝利によって、チームの一体感はより強くなった。ロマニスタたちの拠り所であるトッティは37歳の誕生日を迎えたが、「経験ある実力者たちが揃った今のチームの行く末が楽しみだ。ダービーの勝利はシーズンの行方を変える」と、近年なかった高揚感を語る。
連勝が続けば、周囲は黙っていない。スクデット待望論が沸いてくる。