プロ野球亭日乗BACK NUMBER
楽天優勝の陰に個性的なドラフト戦略。
少ない補強費を“一極集中”で補え!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/30 10:30
プロ野球は選手と監督だけではできない。フロントのバックアップがあってこそ、チームが野球に集中することができるのだ。
球団創立9年目。ついに楽天が悲願のリーグ優勝を果たした。
9月26日の西武ドーム。最後はエースの田中将大が西武の浅村栄斗を渾身のストレートで空振り三振に仕留めて歓喜が爆発した。
「これは本当かな。ほっぺをつねりたい。まだ信じられないわ」
選手の手で7度宙を舞った星野仙一監督は、優勝監督インタビューでこう夢見心地の気持ちを語った。
思えばオリックスと近鉄の合併に端を発した球界再編騒動、選手会のストライキという荒波によって産み出された新生球団の道のりは、決して平坦ではなかった。
1年目は田尾安志監督の下で38勝97敗という歴史的敗北のスタートを切り、2年目から迎えた野村克也監督のもとでは'09年に2位に躍進。初めてのクライマックスシリーズ進出を果たしたが、頂点には手が届かなかった。
チーム運営は独立採算制だ。
「とにかく金にシビアで、補強費も厳しい」
歴代監督がこう嘆いてきた“シブチン”ぶりはつとに有名で、球団参画の際にプロ野球機構と約束したKスタ宮城の観客席増設も、いまだに完全には履行されていないほどである。
豪腕・星野でも引き出せなかった補強費。
そこに登場したのが、中日、阪神でとにかくオーナーの懐に飛び込み、オーナー決済という形で潤沢な資金を確保して補強を行なってきた星野仙一監督だったわけだ。
だがさすがの星野監督も、このチームでは思うように補強費を引っ張り出すことが簡単にはできなかったようである。
「なかなか補強に使える資金が出ない」
親しい知人にはこうぼやいていたとも聞く。そのためフロントとはぶつかることもしばしばあり、昨シーズン途中には井上智治オーナー代行に代わって、三木谷浩史会長がオーナーに復帰、立花陽三球団社長が就任してバックアップ体制を一新している。