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福西崇史が降格危機の磐田に喝!
残り8試合、前田遼一に全てを託す。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/09/25 11:30
2000年にジュビロに入団し、中山雅史と入れ替わるようにしてFWに定着していった前田。得点以外でも、ベテラン選手として期待されるものがあるはずだ。
沈んだチームを好転させるのがリーダーの役目。
このチームの中心に立っているのは、やはり前田遼一である。寡黙にゴールを狙う職人気質のストライカーに、中山と同じ役割を期待するのは難しいかもしれない。しかし柏戦でゴールを奪った前田が一目散にベンチに駆け寄ると、チームの雰囲気は明らかに好転した。
「遼一なりに冷静に事態を捉えているだろうし、もちろんチーム内における影響力もあると思う。“いつも”と同じようなテンションで戦えることがアイツの良さではあるけど、もしかしたら、そういう部分を変える、というか自分自身の幅を広げるチャンスかもしれない。遼一が“いつも”とは違う戦い方を示せば、必ずチーム全体に連鎖すると思うから。チームの雰囲気を変えるための方法はそれだけじゃないと思うけど、存在感が大きいだけに可能性はある」
チームのために自己を滅する犠牲心がほしい。
試合終了直後、誰もがうつむき加減で視線をピッチに落とす中で、チームに加入したばかりの安田理大が一人ひとりに駆け寄り、バンバンと背中を叩いて声を掛けた。おそらく彼自身、そうした役回りを期待されていることも理解しているのだろう。だからこそ、彼が作ろうとしている“きっかけ”への連鎖反応がほしい。
「犠牲心。そういう言い方が適しているか分からないけど、誰かのため、チームのために自らを犠牲にするという考え方を持つしかない。選手なら分かると思うけど、窮地に追い込まれた時こそ、自分のことを考えすぎて地に足がつかなくなってしまうから。それがあれば、何かが変わるんじゃないかな」
磐田が鹿島に敗れた直後、残留争いのライバルである甲府は浦和から引き分けで勝ち点1を手にし、両者の差は10ポイントに広がった。つまり、「3試合」では逆転が不可能という状況で突入する残り8試合である。
可能性をつなぐポジティブな連鎖を起こすためには、最前線に位置するエース、前田の変化が必要なのではないだろうか。なぜなら彼は、黄金期の磐田で“中山雅史”を体感した一人だからだ。
かつて黄金時代を謳歌した磐田が、J1・J2入れ替え戦を戦った2008年以来となるJ2降格の危機に直面している。前田がこの流れを変える真のリーダーとして目覚めれば、日本代表における彼の立ち位置も変わる気がしてならない。