オリンピックへの道BACK NUMBER
女子のスキー・ジャンプが五輪種目に!?
日本人メダリスト誕生の可能性も。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2010/12/09 10:30
会見したスキー・ジャンプ女子ナショナルチーム。左から高梨、伊藤、渡瀬。2011-12シーズンにはW杯も控えている
ナショナルチームのメンバーは苦労を重ねた同志だった。
しかし、認知度はまだ決して高いとは言えなかった。
それは競技環境にも影響する。
第一線で活動しようとすれば、費用もばかにならないが、支援してくれる企業もなかなか見つからない。学生時代はともかく、社会人になって、どのように生活と競技を両立させればよいか。海外遠征の費用をどうすればよいか。そんな苦労を乗り越えてきた。今も決して恵まれた環境にはない。少しでも認知してもらおうと、現在も山田を中心に選手自ら、小冊子を作成して配布するなどの努力を重ねている。
取材の中で感じられた仲のよさは、ライバルであるとともに、きっと、そうした苦労をともに重ね、そして競技そのものの未来を担う、支える仲間であるという意識だ。
例えば高梨は、日本代表になる前、小学生の頃に「お願いをして」ナショナルチームの合宿に参加していたことがある。そのとき、他の選手たちはいつも親切に高梨の世話を焼いていたという。日本代表になった現在でもそれはかわらない。海外遠征などで学校を休むことも多い高梨は、「遠征先では先輩たちが勉強を教えてくれています」と言う。
伊藤の言葉もこれまでの歩みを物語っているだろう。
「(オリンピックの新種目候補になったのは)今までの先輩の積み重ねがあったからだと思います」
オリンピックへの正式採用がジャンプ女子の未来を切り拓く。
むろん、可能性は濃厚だとは言え、まだオリンピック採用が正式に決まったわけではない。だから渡瀬は、慎重にこう語る。
「今までも、採用されるんじゃないかと話に出ては流れましたし、今回もまだ決まったわけじゃないですから」
一方で「もちろん、出たいです」と、その強い気持ちも隠しきれない。
オリンピックでの採用を競技の未来を大きく拓くものとして、彼女たちは待ち望んでいた。
来春の正式決定につなげるために、この冬もせいいっぱいの活躍を選手たちは胸に誓っている。