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女子のスキー・ジャンプが五輪種目に!?
日本人メダリスト誕生の可能性も。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2010/12/09 10:30
会見したスキー・ジャンプ女子ナショナルチーム。左から高梨、伊藤、渡瀬。2011-12シーズンにはW杯も控えている
「ようやくですよね」
場内で、そんな言葉が聞こえた。
11月29日、シーズン開幕を前に東京で開かれた、スキー・ジャンプ女子のナショナルチームの記者会見でのことだ。
会場は、どこか高揚感と熱気に包まれていた。多数出席したメディアの姿に、注目の度合いが表れていた。
おそらく、東京でこの女子ナショナルチームの会見が開かれるのは初めてである。
今回、全日本スキー連盟が場をセッティングしたのは、10月に国際オリンピック委員会が2014年のソチ五輪の新種目の一つとして採用する方向を打ち出したことと、今夏の国際大会で好成績を残していることにある。
世界各地を転戦して行なわれるコンチネンタルカップで、会見に出席した高梨沙羅は総合4位に入り、伊藤有希は5位、渡瀬あゆみが9位と、トップ10に3人が入ったのだ。しかも、高梨は中学2年生、伊藤も高校1年生での活躍である。
「女子がジャンプなんて」という批判を飛び越えて。
そのジャンプ女子を、今までに何度か取材したことがある。印象的だったのは、選手同士、仲がとてもよく見えたことだった。競技者としては、ライバル関係にあるにもかかわらず、である。
そこには、日本におけるジャンプ女子の成り立ちがかかわっている。
これまであまり知られているとは言いがたかったジャンプの女子が日本で本格化したきっかけは、'08-'09年のシーズンを機に引退した山田いずみの登場に始まる。
小さい頃、試しに飛んでみたのをきっかけに、山田はジャンプにのめりこんだ。当然、大会に出てみたくなる。
だが当時は、出場する大会はないといっていいような状態であった。ジャンプは男子がやるものという思い込みが強かったのだ。「女子がジャンプなんて」、そんな声も少なからずあったと聞く。
その中にあって、山田はジャンパーとしての熱意をアピールし続けた。辛うじて出場が認められた大会で、女子でも飛べることを証明しようと努めてきた。
やがて、山田に続き、少しずつジャンプに取り組む女子選手が増えていくのとともに、参加できる大会も少しずつ増加した。ナショナルチームも結成された。