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「孤独」の深さを教えてくれた、
60代のひねくれた友達。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/09/08 08:01

「孤独」の深さを教えてくれた、60代のひねくれた友達。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

井手くんがお世話になり、色々なお話をしてくれたTed&Mihoko夫妻。

最もリタイアする人が多い、北カリフォルニア。

 それから幾つかの補給地点を経て、僕はメキシコとカナダの中間地点を通過した。出発からおよそ2カ月半。

 早かったような、長かったような。

 辿り着いた町Chesterではエンジェルの家の庭にキャンプをさせてもらい、Lotus、Hermesらと、楽しく中間点への到達を祝った。

 PCTで最もリタイヤしてしまう人が多いと言われるのが、この北カリフォルニアの区間だ。

 それは7月に入ったことによる暑さ、水場の少なさ、そして何より、シエラネバダを越えてきた僕たちにとって単調に感じてしまいがちな景色によるものだ。

 しかし、事前に聞いていたほど単調には感じず、それまで深刻に悩まされていた蚊の大群もいなくなったこの区間、僕の敵は寂しさという内的なものだった。

(余談だが、アメリカの虫除けは超強力だ。注意書きに「カメラなどを近づけないでください。溶けることがあります」とある。そんな代物を身体に塗って良いはずがないが、シエラ後半からはこの虫除けに頼る他なかった。)

歩いていると、考え事がはかどる?

 大学の先輩でもある、映画監督の篠田正浩は、大学時代競走部に所属し、都内を走りながら脚本などのアイデアを考えたという。

 この頃の経験が癖で、考え事をする時には走ったり歩きながら考えたと聞いたことがある。

 もちろん僕は映画なんか撮れないが、確かに歩いている時間というのは、喫茶店に座ってパソコンとにらめっこをしているよりは考え事がはかどるような気がする。

【次ページ】 あと半分、この旅の終わりを考える。

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