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「孤独」の深さを教えてくれた、
60代のひねくれた友達。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/09/08 08:01

「孤独」の深さを教えてくれた、60代のひねくれた友達。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

井手くんがお世話になり、色々なお話をしてくれたTed&Mihoko夫妻。

 本棚から年季の入った『暮しの手帖』を取り出していると、Tedが朝食をテーブルに運んでくれる。

「どうして女ってのは料理の写真が好きなんだろうな」と真面目に困惑顔なのが、なんだか可笑しい。

 フレンチトースト、スクランブルエッグ、それにベーコン。定番の組み合わせ。それでも、後にも先にも、こんなに美味しいアメリカンブレックファーストを食べたのはこれが初めてだ。彼がシリアルしか食べないので、僕はなんだか申し訳ない。

「夏はいつもこうなんだ。気にしないでくれ」

僕を息子のように可愛がってくれたTedさん。

 昨年PCTを歩いた日本人ハイカーから紹介してもらったTedとミホコさん夫妻。

 峠で4時間も待ち合わせに遅れた僕を待ち、家に2泊させてくれた。彼らのホスピタリティには、本当に感謝の気持ちしかない。

 癌の研究医として働くミホコさん、軍でマラリアを研究してきたTed。二人はワシントンDCで長年働き、数年前に、この西海岸の片田舎に越してきたという。

「こっちは自然が沢山あるだろう」とTed。「少し楽な暮らしをしたくて」。悪戯っぽく笑うのはミホコさん。

 Tedは定年退職しているというし、ベトナム戦争に志願したというから、おそらく60代後半だろうか。ミホコさんは小柄なこともあり、彼より二回りほどは若く見える。

 バックパッキングが共通の趣味で、二人でアラスカに行ったこともあるのだとか。

「子どもは嫌いで、欲しくないんだ」とTedは言うが、彼はまるで父のように僕を心配し、可愛がってくれた。

【次ページ】 優秀なバックパッカーは静かに歩く。

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