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人数あわせのトレード要員ではない!
アスレチックスが岩隈を渇望する理由。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/11/13 08:01

人数あわせのトレード要員ではない!アスレチックスが岩隈を渇望する理由。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

岩隈は今季10勝9敗と3年連続となる2桁勝利を達成したものの不本意な成績。21勝を挙げ、沢村賞に輝いた2008年のようなピッチングをMLBで取り戻せるか

勝ち星が計算できる右腕投手が必須のチーム事情。

 今シーズンのアスレチックスの投手陣は非常に安定していた。特に先発投手の防御率は3.47でメジャー1位。だがその一方で、彼らには経験が不足している。メジャー9年目のベテラン、ベン・シーツが8月に右ひじ手術で戦線離脱して以来、先発を務めた5人は、ダラス・ブレーデン(27歳)、ジオ・ゴンザレス(25歳)、ビン・マザーロ(24歳)、トレバー・カーヒル(22歳)、ブレット・アンダーソン(22歳)──と、メジャー在籍4年以内の若手ばかりだ。しかも2年連続で2桁勝利を記録している投手はカーヒルただ1人。まだ大黒柱として計算できる投手が存在しないのが実情だ。

 さらに中継ぎにも回っている5番手のマザーロを除き、ローテーションでフル回転した4投手中3投手が左投げ(ある意味ぜいたくな状況ではあるが)という事情からも、岩隈のような実績ある右腕投手は喉から手が出るほど必要な戦力なのだ。

 ここ数年は各チームのエース級の年俸は1000万ドル前後が相場だが、仮に岩隈と契約したとしても最近の日本人選手の実績を考えれば、そこまでの高額年俸に達する可能性は極めて低く、岩隈が日本での実績通りの活躍をしてくれれば、かなり割安でエース級の投手を得ることにもなるわけだ。

岩隈が加入すれば余剰投手と強打者をトレードできる。

 また岩隈の加入は、実は更なる戦力補強にもつながっている。こちらの地元2紙でも同一の見方をしているのだが、余裕のできた投手をトレード要員にして懸案だった強打者獲得に乗り出すことができるのだ。

 上記の5選手の他に、シーズン終盤には31歳でメジャー初昇格を果たし首脳陣から高評価をえた左腕のボビー・クレーマーもおり、有望な若手先発投手が余っている状態だ。わざわざ高額年俸を必要とするFA市場の強打者を獲りにいかなくても、それら若手投手と引き替えにFA前のいきのいい強打者をトレードすることも可能で、アスレチックスにとってはこれ以上の補強策はないだろう。一部報道では岩隈自身もトレード要員になる可能性があるとしているが、個人的には年俸が比較的高額で、しかもメジャーでの投球が未知数の岩隈が、他の若手投手以上の魅力ある存在になるとは考えにくい。

【次ページ】 高年俸のチャベスを放出し、岩隈+打者数人の資金を?

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岩隈久志
オークランド・アスレチックス

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