プロ野球亭日乗BACK NUMBER
2010年ドラフト会議を完全検証。
球団の成功と失敗、一気読み!!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/10/29 12:30
広島が獲得した福井は、外れ1位にしては上出来の逸材。
例年は高校生中心の指名になる広島も、野村謙二郎監督の強い希望で、今年は即戦力投手を軸にした指名となった。
中でも斎藤、大石のチームメートの福井優也投手を外れ1位で指名できたのは大きい。福井は愛媛・済美高で2004年の選抜大会に優勝。翌年のドラフトで巨人の4位指名を受けたがそれを拒否して1年浪人の末に早大に入学して、順調に成長してきた投手で、力的には斎藤を上回る評価をしていた球団もあったほどだ。しかも2位では富士大・中村恭平投手、3位で大阪ガス・岩見優輝投手、4位で東海理化・金丸将也投手と3人の即戦力左腕を指名する徹底ぶり。
「投手のレベルアップが必要だったから、いい指名ができた」
野村監督も満足顔だった。
甲子園で話題となった東海大相模の一二三投手は阪神へ。
1位では即戦力の投手指名にこだわったのが、阪神と横浜の2球団だった。
両球団とも1位では大石を入札。くじで外れると阪神が社会人No.1と言われていた東京ガスの左腕・榎田大樹投手、横浜がJFE東日本の本格右腕・須田幸太投手を指名した。横浜は2位では法大の加賀美希昇投手、4位でも大阪学院大の小林寛投手と即戦力投手中心の補強。一方の阪神は2位指名では東海大相模の一二三慎太投手を獲得したのも目を引いた。
1位指名の抽選に外れて将来性を重視した補強になったのがソフトバンク、ヤクルト、オリックスの3チームだった。
ソフトバンクは斎藤を外すと外れ1位で習志野高の山下斐紹捕手を指名。2位で広島経大の柳田悠岐外野手を指名したが、その後も3人の高校生を指名と将来性をにらんだ補強となった。
一方のヤクルトは1位で斎藤、外れ1位で塩見と2度のくじ引きで外れて指名したのが履正社の山田哲人内野手。山田は俊足、好打の大型内野手として高校生候補の野手ではトップの人気だっただけに、何とか“合格点”かもしれないが、それでも即戦力投手の補強という観点からは一歩出遅れた感は否めない。2位で指名した伯和ビクトリーズの右腕・七條祐樹投手がどこまで戦力になるか、に期待をかけるところだろう。
悲惨な結果となったオリックスは史上初のくじ引き3連敗!!
そして今年のドラフトで最も悲惨だったのがオリックスの岡田彰布監督だったのは誰の目にも明らかだ。
1位で大石を外し、外れでは伊志嶺をロッテに持っていかれた。さらに愛弟子・T-岡田の後輩となる山田もヤクルトにさらわれて、なんと1位指名くじ引き3連敗は史上初のことだった。「2回目からは重複せんと思って安心しとった。情報不足。大失敗よ」
岡田監督自身がこう嘆いたように、ドラフト戦略自体は大失敗に終わったことになる。そして、外れの外れの外れとして指名したのは、前橋商の後藤駿太外野手だった。
「イチロー2世みたいな選手と聞いているし、見るのが楽しみや」
こう語って会場を去った岡田監督は、心なしか肩を落としているようにも見えたが、 今年のドラフトに限っては、これもまた運命なのかもしれない。2年後、3年後にもし後藤が「イチロー2世」となっていれば――この連敗もまた、「必然」だったということになるのだろう。