プロ野球亭日乗BACK NUMBER
2010年ドラフト会議を完全検証。
球団の成功と失敗、一気読み!!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/10/29 12:30
育成に定評がある西武は大石をどう育てるつもりなのか?
多くの球団がストッパーとして大石を指名した。実は西武も、補強ポイントの一番は抑え投手のはずだった。しかし、その実績のある大石を指名したにもかかわらず、先発での起用を明言したことに、逆に評価の高さが表われている。涌井秀章、岸孝之両投手を筆頭に、若手の実力派投手がそろい、その育成にも定評がある。
大石が大投手に成長する運命をもっているとすれば、この西武がくじを引いたこと、これもまた「必然」の結果ということになるのかもしれない。
他球団が故障で回避した大野を、単独指名した中日の意図。
「左が少なくなっていくのは目に見えている事実だからな」
1位で佛教大・大野雄大投手を一本釣りした中日・落合博満監督のコメントだ。
エース格のチェン投手が、来年にもメジャー移籍がウワサされる中で、左腕の補強を目指したチーム事情から、確実に獲得できる大野を単独指名した。
左ではNo.1と言われて本来なら一本釣りは不可能な選手だったが、左肩の故障でドラフト直前のリーグ戦にまったく登板しなかったことで、各球団が指名を回避。その中での単独指名だった。
「故障選手だけど、吉見もそうだった。そんなに驚くことじゃないだろう」
もちろん入念な調査の結果の指名だけに、落合監督のコメントにも自信がみなぎる。大野本人も故障については「軽症」としており、「好きだった阪神のファンに“もうやめて”って言われるぐらいの阪神キラーになる」と宣言した。
ドラフトは指名した1位を獲得できたら90%は成功だ、と言われるが、そういう意味ではこの4球団は、ほぼ狙い通りの補強をできたことになる。その一方で、競合してくじを外した残り8球団の中でも、その後の指名で狙い通りの補強をできた球団は少なくない。
今季最下位の楽天は即戦力。ロッテは里崎の後継を。
星野仙一新監督を迎えた楽天は、外れ1位でヤクルトと競合の末、八戸大の左腕・塩見貴洋投手を獲得。折り返しの2位指名では東京ガスの美馬学投手を指名した。
「右なら大石、左なら塩見と思っていたから80点の補強だった。うちは左が少ないから、塩見には先発ローテーションに入って欲しい」
星野監督は期待を語ったが、3位では地元東北福祉大の阿部俊人内野手を獲得するなど、即戦力を重視した指名は、今季最下位に低迷したチームの建て直しには「必然」の指名だったといえる。
一方、今季は3位ながら日本シリーズ進出を決めているロッテも、補強ポイントにそった指名だった。
斎藤を外して1位は野手ではNo.1と言われた俊足、好打の東海大・伊志嶺翔大外野手をオリックスと競合の末に獲得。その上で、2位には立正大の南昌輝投手、3位で七十七銀行の小林敦投手と即戦力を指名。そして里崎智也捕手の後継作りが急務と言われる中で4、5位には青学大・小池翔大、大阪桐蔭高・江村直也と二人の捕手を指名。今日と明日をにらんだバランスの取れた補強に成功している。