ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
香川のドルトムントがついに首位!
ブンデス制覇を狙える4つの理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/10/24 08:00
代表を3人も供するポーランドサッカー協会との関係。
次に挙げられるのが、今夏の補強を活かした、巧みなチームマネージメントだ。
第8節にケルンを2対1で下して首位に立ったとき、ドルトムントの首脳陣が異常なまでに喜んで見せたのには理由がある。ブンデスリーガでは毎節1試合だけ、他の試合に先立って金曜日の夜に行なわれる。ケルン戦が行なわれたのは、国際Aマッチデー直後の金曜日。選手が代表での活動を終え、疲労を抱えて戻ってくる中で、その日に試合を行なうのはタイミングとしては最悪だった。
カレンダーを目にしたドルトムント首脳陣が電話をかけたのは、ポーランドサッカー協会だ。今季からレバンドフスキとピスチェクが加わったことで、昨季の右MFのレギュラーであるブラチコフスキーと合わせ、ドルトムントはポーランド代表を3人抱えることになった。そこで、彼らはメンバー表に目をやり、優先順位を付けた。
1.ブラチコフスキー
2.ピスチェク
3.レバンドフスキ
奇しくもポーランドは2012年のEUROの開催国で予選を免除されるため、組まれていたのは2つの親善試合。公式戦でないのならば……。ドルトムントは提案した。
1試合を終えたタイミングでブラチコフキーをドルトムントに戻してほしい。さらに、ケルン戦で右サイドバックとして出場が見込まれていたピスチェクについても、1試合あたり60分ほどの起用にとどめてほしい。ただ、レバンドフスキは好きなだけ起用してもらってかまわない。
この交渉が実り、ブラチコフスキーは1試合を終えてドルトムントに戻ってきた。その彼が、ケルン戦で先制ゴールをマークしたのだ。シナリオとしては出来すぎだが、これをチームマネージメントの勝利と呼ばずして、何と呼ぼう。
チームの和を重視するクロップ監督の方針が実りはじめた。
3つ目に挙げられるのは、選手の成長である。
クロップは、2シーズン前にドルトムントの監督に就任してから、ドラスティックに若返りを進めてきた。今季のチームの平均年齢は23.9歳で、リーグ最年少となっている。
現在のレギュラーの中でも、スボティッチ、グロースクロイツ、S・ベンダー、香川はクロップ監督が連れてきた選手で、いずれも21歳から22歳。彼らを束ね、ときに我慢しながらも試合に起用することで、選手には成長を、チームには成熟を促してきた過去の2シーズンの効果が表れ始めている。
そんな中、今シーズンの開幕前にクロップ監督が取り組んだのは、戦術面ではなくメンタル面での強化。プレシーズンのキャンプ中に行なわれたミーティングの内容について、香川は驚いたという。
「戦術の話ではなくて、チームが一つになって戦うためのものがメインだったんですよ」
チームには派閥もなく、選手たちは底抜けに明るい。ドルトムントの歴史をひもといても類を見ないと言われるほどのチームワークの良さは、クロップ監督の周到なプランのたまものだ。その甲斐あって、日に日に成長を続けている。ブンデスリーガのケルン戦やヨーロッパリーグのルヴィフ戦で、ロスタイムに決勝ゴールを決めたのも、選手のメンタル面での成長とは無縁ではないだろう。