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<移籍の真相とバルサへの想い> ズラタン・イブラヒモビッチ 「ミランは最高のビジネスを成功させたぜ」
text by
クリスティアーノ・ルイウCristiano Ruiu
photograph byAFLO
posted2010/10/04 06:01
「俺は、超の付くビッグクラブでのみプレーすべきFWだ」
――バルサが君の獲得に投じた額は約7300万ユーロ(5000万+サミュエル・エトー)で、ミランから得た額は2400万ユーロ。異常なまでの差額だが、その理由とは?
「簡単なことだ。理由はたったひとつ、あくまでも監督にある。彼が俺を何としてでも出したかったからだよ。昨季、俺の16ゴールがあったお陰でバルサはリーグを制したわけだが、その直後にグアルディオラはクラブの新首脳に対してこう言っていた。『イブラを放出しないのであれば、(監督としての)契約更新を拒否する』。こうして彼はバルサに対し俺の放出を強要し、その結果としてミランは最高のビジネスを成功させたというわけだ」
――仮にミランからのオファーがなかったとすれば?
「もちろんバルサに残っていたさ。あと4年の契約が残っていたんだからな。とにかく、確かなのは、この俺は、超の付くビッグクラブでのみプレーすべきFWだってことだよ。デカイ大会を、世界で最も重要なタイトルを狙うクラブでこそ真価を発揮するのがこの俺だからな。そこらへんのクラブに俺が行くことはないってことさ」
――とはいえ、昨季の君を評して、「バルサのサッカーにフィットできていない」といった声も聞こえていたが。
「下らない話だな。ただ確実に言えるのは、昨季の俺が通算で21ゴールを決めたってことだ。少なくはないと思うんだが、どうだい?まぁ、言いたいヤツには言わせておけばいい。俺は俺の仕事に集中するまでのことさ。とにかくバルサでの俺は他の選手たちとのプレーを楽しんでいた。あれだけ巧いヤツらが揃うチームで楽しめない方がおかしいだろ?」
――インテル時代とは明らかに違っていたのは事実だ。
「そりゃそうだよ。インテルではこの俺が全部を、つまりゲームを作り、アシストを送り、そんでもってゴールを決める役まで一人でやってたんだからな。ところがバルサには巧い連中が揃っていたから、適度に仕事を分担することができたわけだ。俺がバルサのサッカーに馴染めなかったと言うヤツが少なくはないって話だが、だったら実際にバルサの連中に聞いてみてくれよ」
――チャンピオンズリーグ(CL)に関して聞かせてもらいたい。やはり今季もバルサこそがCL制覇の最有力候補だと推す声が多い中で、君の考えとは?
「まぁそういうことになるだろうな。何度も言うようだが、とにかくあのチームには凄い連中が揃っているから。ただ、今季のミランが限りなく差を縮めているのも、また紛れもない事実だよ。単に俺が入ったからってだけじゃなく、あのロビーニョが加わり、試合ごとに巧くなるパトがいるし、完全復活を遂げようとするロナウジーニョもいる。天才ピルロも後ろに控えている。
そして、絶対に忘れてはならないのがフィリッポ・インザーギだよ。もう30代後半だが、彼が今もなお世界屈指の点取り屋で、欧州カップ戦のスペシャリストであることに変わりはない。デカイ試合になればなるほど決める男だ。あの集中力はマジで半端じゃないからな」