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あの“あまちゃん”は同郷・同世代!
上京4年目、菊池雄星のドラマは続く。 

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加藤弘士

加藤弘士Hiroshi Kato

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/06/25 12:55

あの“あまちゃん”は同郷・同世代!上京4年目、菊池雄星のドラマは続く。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

監督推薦でのオールスター初出場もほぼ当確と言われる雄星。1勝差で後を追う楽天・田中将大との最多勝争いにも注目が集まる。

 39歳にして初めて、連続テレビ小説にハマってしまった。「あまちゃん」である。宮藤官九郎のグルーヴィーな脚本に笑わされたり、泣かされたり、ハートをわしづかみにされている。ちりばめられたギャグや小ネタを逃すまいと、録画を巻き戻して丹念に見返すこともしばしばだ。丁寧な時代考証にいつも敬服しながら、極上のエンターテインメントを毎朝堪能している。

 劇中、能年玲奈が演じる主人公の天野アキは2009年の春、北三陸高校の2年生から3年生に進級する。つまり同じ岩手で、花巻東のエースだった菊池雄星と同世代になるのだ。

 一例を挙げると――。

 アキと、橋本愛が演じる足立ユイによるユニット“潮騒のメモリーズ”を乗せたお座敷列車が北三陸鉄道を走るのは、同年の3月18日だ。この1週間後の同25日、雄星はセンバツ初戦・鵡川戦で9回1死まで無安打無得点の快投を演じ、最速152キロをマーク。その名を一躍、全国へと轟かせている。県勢初の決勝進出に、岩手の老若男女が熱狂したことは記憶に新しい。

 さらに。

 海女Cafeでイベント『海女~ソニック』が開催されたのは8月13日からの3日間なのだが、前日12日には全国の野球ファンが熱視線を送る中で、雄星が夏の甲子園初戦の長崎日大戦に先発。左脇腹を痛めながらも力投し、日米18球団のスカウトをうならせている。

 岩手県勢90年ぶりとなる夏の甲子園ベスト4入りの原動力となったサウスポーに、ウニ捕りを終えた「海女クラブ」の面々がNHKを見ながら声援を送る――。「2009年の岩手」を象徴する、そんなシーンがあってもいいのに、とも思う。

垢抜けても、真摯な姿勢や故郷への熱き思いは変わらない。

 と、こんな調子でいかにわたしが「あまちゃん」に魅せられているかを話しまくると、雄星は苦笑するのだった。

「そんなに面白いんですか。自分は全然、見ていませんよ。『じぇじぇ』って、どういう意味なんですか。えー、自分が住んでいた盛岡では、全然つかいませんよ~」

 4年前、テレビのニュースやスポーツ紙の1面で特徴的に映った顔のニキビは、知らぬ間に消えていた。

 22歳。すっかり垢抜けた印象がある。

 ウエートトレーニングと栄養学に基づく体作りの成果が表れ、肉体はあの頃と比べ、一回りも二回りも大きくなった。カーブとチェンジアップを習得し、投球の幅も広がった。バランスの良いフォームから強いストレートを投げ込み、打者を翻弄する。走者を背負っても動じない佇まいは、去年までとは見違えるほどだ。

 それでも、変わらないものもある。

 野球に対する真摯な姿勢、故郷への熱き思いだ。

【次ページ】 「ここは自分にとって、パワースポットなんです」

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