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あの“あまちゃん”は同郷・同世代!
上京4年目、菊池雄星のドラマは続く。 

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加藤弘士

加藤弘士Hiroshi Kato

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/06/25 12:55

あの“あまちゃん”は同郷・同世代!上京4年目、菊池雄星のドラマは続く。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

監督推薦でのオールスター初出場もほぼ当確と言われる雄星。1勝差で後を追う楽天・田中将大との最多勝争いにも注目が集まる。

「ここは自分にとって、パワースポットなんです」

 今月、時の流れを感じる瞬間があった。

 交流戦中の6月6日、菊池雄星が甲子園に還ってきた。彼のスパイクが黒土を踏みしめるのは2009年8月23日、夏の準決勝・中京大中京戦で敗退して以来、1383日ぶりのことだった。

「マウンド、確認に行ってもいいですか?」

 この日、阪神戦での登板予定はなかったにもかかわらず、試合前練習では笑顔でマウンドへとダッシュし、シャドーピッチングを行った。ちょうどその瞬間、凄くいい顔をしていたよーと話すと、清々しい表情でこう言った。

「ここは自分にとって、パワースポットなんです」

 浜風に吹かれながら、気持ちよく外野フェンス沿いを全力疾走する雄星を見つめ、思った。

 あの夏の甲子園以降、進路の決断、6球団が競合した運命のドラフト会議、入寮、新人合同自主トレ、初の南郷キャンプなど、18歳の左腕を巡る報道は過熱の一途を辿っていった。プロ1年目の左肩痛をはじめ、幾度の挫折に見舞われながらも、この若者は潰れなかった。歯を食いしばり、前を向くことで、表舞台にはい上がってきた。

故郷の岩手県・宮古市での講演で誓った「公約」。

 人はそれを「覚醒」という。「覚醒」を辞書で引くと「目を覚ますこと」とある。

 それはなんだか、違う気がする。もっとこう、汗と涙がしたたる中で、日々少しずつ積み重ねていくような、泥臭い地道な作業。そんな歳月を経て、自信が徐々に確信に変わっていく境地。プロ4年目でようやく、菊池雄星はそういう場所にたどり着いたということではないだろうか。

 雄星は語ってくれた。

「人生、何事も肯定しなきゃいけないと思っています。いいことばかりじゃないですけど、過去は変えられないので。肯定して、プラスにとらえていくしかないかなと。だから今、前向きにできています。駐車する時も常に、前向きで入れてるぐらいなんですよ」

 海の青さがまぶしい岩手県の沿岸部には子供の頃、家族で海水浴に行ったり、少年野球の遠征に訪れた思い出があるという。

 津波によって甚大な被害を受けた宮古市で昨年末、雄星は400人の聴衆を前に、講演を行った。ユニホーム姿の少年たちが目を輝かせながら、話に聞き入った。会場から徒歩圏内にあった仮設商店街では餅つきを行い、復興へと歩む住民たちとふれ合った。

 講演を終えると、表情を引き締め、言い切った。

「来年は10勝して、ここに戻って来たい」

 6月25日現在。8勝2敗、防御率は12球団でダントツの1.30。あの日の「公約」達成は、ほぼ間違いないだろう。

【次ページ】 週に一度見ることができる、菊池雄星主演の熱血ドラマ。

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