野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
セ・リーグ制覇への鍵を握る男たち。
阪神、中日、巨人の救世主は誰か?
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/09/13 12:50
先見の明がありすぎ!? 理解不能な落合監督の言葉。
例えば6月20日の巨人戦後のコメント。
「打線に波ってあるの? 波は海と川と湖にしかないでしょう」
8月29日、度重なるバント失敗で負けた横浜戦後のコメント。
「バント失敗? そんなことは問題じゃない。みんなは知らなくていいの」
「知らなくていい」とはすごい。江川卓の解説などにも見られるが、道を極めた達人たちの発言は、我ら一般の野球好きには高尚すぎてちんぷんかんぷんか負け惜しみにしか聞こえない。個人的にはプロ野球の神秘性を高め、その深淵なる奥義を読み解くための暗号みたいで大好きなのだが、ドラゴンズファンにすればたまったものじゃない。最近では落合バッシングも頻繁に起こっていると聞く。
しかし、このような落合発言に対しテリー伊藤氏はその著書『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』の中で、このように解説している。
「落合監督の『強がりに聞こえる言葉』の奥には、常に根拠がある。ただ、あまりにも先見の明がありすぎるから、彼以外のすべての人たちには強がりにしか聞こえない」
今季の荒木・井端のコンバートに、肩入れしていたセサルなんて見ていると「本当か?」と思わずにはいられないのだが、この終盤戦、快進撃の陰には、落合監督の怪発言が不思議とつきまとっているから恐ろしい。
中日のキープレーヤーを落合語録に探してみると……。
事例としては、先の山本昌を立ち直らせた言葉だけでなく、8月31日の広島戦後は、快勝したにもかかわらず「緊迫感がない。優勝争いをしているチームがする試合じゃねぇ!」と一喝すれば、その日から6連勝。
9月7日、0-1で阪神に敗れた試合後に打線に対して「144試合、寝っぱなしか」と吐き捨てれば、翌日には10得点の大勝。前日に凡ミスを犯し、マウンドで自ら叱責した荒木も翌日から2試合連続猛打賞。昨日の横浜戦まで打率.428と好成績を残している。
この結果を見ていると、これらの単なる偏屈親父の嘆きにしか聞こえない言葉にも、表面上からは見えない選手を発奮させる何かがあるんじゃないだろうかと勘繰ってしまう。そして、これからの戦いのキーとなる人物も、落合監督の言葉に隠れているような気がしてならない。
それは
「俺ならば全打席敬遠するね」
と言った和田か。
「俺が見た外国人選手のなかで一番いい」
と春先に言っていたセサルという可能性はないと思うが。