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10年前からのルーニー頼みで、
イングランド代表再建の道は遠い。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/06/19 10:31

10年前からのルーニー頼みで、イングランド代表再建の道は遠い。<Number Web> photograph by Getty Images

5月29日ウェンブリーでのアイルランド戦に出場したルーニー。17歳でフル代表デビューして10年。代表歴代5位となる36ゴールをマークしている。

前回W杯の結果を糧に復活を期したはずだったが……。

 イングランドは、そのルーニーの不振が早期敗退につながった前回W杯を機に、長期展望で、復活への決意と取り組みを新たにしたはずだった。だからこそ、以前とは違いブラジル大会での優勝を期待する声は聞かれない。

 とはいえ、予選敗退という想定外の事態が現実味を帯びれば国内の悲観ムードは高まる。しかも、それが次回に限らないのだから悩ましい。5年後の次々回大会までに台頭しているべき次世代が、現世代にも増して頼りないのだ。

 去る11日、イスラエルでのU-21欧州選手権で、イングランドはグループステージで姿を消した。しかも、3試合でポイント数「0」の惨敗。PKによる1点がなければ、得点数も「0」に終わるところだった。

 イタリア戦(0-1)では、ボールを支配できずに黒星発進となり、ノルウェー戦(1-3)では、ポゼッションを得点機に変えられずに敗退が決まり、イスラエル戦(0-1)では、意地さえ見せられずにグループ最下位となった。

 6月末で任期満了となる監督のスチュワート・ピアースに、U-21代表での契約延長はまずあり得ない。チームの出来は、元A代表監督のグレン・ホドルと、昨年までA代表監督候補と目されたハリー・レドナップが、共に「まともなサッカーができない」と嘆くほど酷かったのだ。

 U-21戦のテレビ解説を務めていた前者は、ピアースの後任候補の1人と言われる。だが、年に数回、ユース代表選手を預かるだけの指揮官を変えたところで、次世代育成へのインパクトは最小限。後者が『サン』紙上のコラムで指摘したように、「抜本改革」が必須だ。

活かされていないプレミアの“ホーム・グロウン・ルール”。

 プレミアリーグの“ホーム・グロウン・ルール”は、その一環であるはずだった。プレミア所属クラブは、2010-11シーズンから、リーグに提出する登録選手リスト上で、22歳以上の人数を25名に制限された上、うち最低8枠を国内で育成された選手に与える義務を負っている。21歳以下はリストに随時追加登録できる点と併せ、国産の若手起用を促すための新規則だった。

 ところが、リスト上の若手が、頭数を合わせるためだけに登録され実際にプレミアのピッチに立てなくては意味がない。

 今回の欧州選手権でピアースが選んだU-21代表メンバーの中で、今季リーグ戦の過半数に出場できた選手は、リバプールのMFジョーダン・ヘンダーソンと、サウサンプトンのDFナサニエル・クラインらの4名のみ。それが、“ホーム・グロウン・ルール”導入3年後の実情だ。

 協会も、育成を促進するために、ユース代表トーナメントへの認識を改める必要がある。今回の欧州選手権に際し、直前のA代表戦2試合に招集された若手を、U-21代表の対象外とした事自体に問題はない。但し、闇雲にA代表を優先した感が否めない。

 例えば、アレックス・オクスレイド・チェンバレンの招集。19歳のウィンガーは、アイルランド戦で先発し、途中出場のブラジル戦ではゴールを決めた。いずれも、貴重な経験ではある。

 しかし、アーセナルの逸材をA代表の戦力へと鍛え上げる観点からすれば遠回りのように思えても、ユースレベルでの国際トーナメント本番で心身両面のプレッシャーを経験させる方が結果的には近道ではないか?

 U-21代表でメンバー入りしていれば、同じ1週間ほどの日程で欧州選手権に3試合連続で先発していたはずだ。クラブでのチェンバレンは、若手の酷使を避けるアーセン・ベンゲル監督の配慮もあり、先発は17試合、途中出場も16試合と、6月にトーナメントを戦う余力を残していたのだから。

 トッテナムのカイル・ウォーカーにも同じ事が言える。23歳になったばかりの右SBは、怪我で療養中でなければ、U-21代表での真剣勝負ではなくA代表での親善試合に帯同することになっていた。

【次ページ】 A代表の将来のため、U代表を軽視してはならない。

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