セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
“アズーリ”から見たコンフェデ杯。
智将の大胆采配が日本代表を襲う!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/06/18 10:31
友人関係であるだけでなく、互いにリスペクトし合うプランデッリ監督(左)とザッケローニ監督。相手の手のうちを知る2人はいかにして戦うのか。
プランデッリ監督は親友ザックとの対戦を心待ちに。
急造とはいえ“クリスマスツリー”は、メキシコ戦で十分以上に機能した。「4-2-3-1」を使う日本相手に、アズーリが2戦続けて同じ布陣を踏襲する可能性は高い。
日本代表には先月末のブルガリア戦で使った「3-4-3」を突如用いてくる奇策もある。それでもプランデッリは、旧知であるザッケローニの手の内について先刻承知だろう。
プランデッリは、ザッケローニがイタリア・サッカー界で心を許す数少ない友人の一人だ。昨年12月に対戦カードが決まった後、日本代表チームにではなく、率いる指揮官の手腕に警戒心を露にした。
「アルベルトとの対戦には興奮を隠せない。経験豊かな指導者である彼は、あらゆる手を講じてくるだろう」
対するザッケローニも、伊紙インタビューで「今のアズーリは一握りのトッププレーヤー頼みではなく、強固なグループで形成されている。チェーザレの素晴らしい仕事ぶりがうかがえる」と、プランデッリの手腕を称えるコメントを寄せている。
戦術大国が生んだ2人のイタリア人指揮官は、互いに対戦を心待ちにしている。
崖っぷちに追い込まれてからが、アズーリの本領発揮だ!
悪条件に晒されたときこそ好結果が出る、というジンクスがイタリアにはある。
昨年のEURO開催前には国際八百長疑惑が発覚し、直前のテストマッチでロシア相手に0-3と大敗。しかし大会では躍進し、結果は準優勝した。カルチョ・スキャンダルがあった2006年のドイツW杯でも優勝している。さらに遡れば、2000年のEURO直前にもノルウェー相手に0-1で敗れたが、本大会では欧州制覇寸前までいっているのだ。
追い詰められないと本気を出さないのは、アズーリの困った悪癖ともいえるが、大会ホスト国ブラジル以外に、国際トーナメントでのメンタル・アプローチを知りえるのは、4度も世界の頂点に立ってきた彼らだけである。
大会初戦の快勝によって、イタリア代表のムードは高揚している。2戦目の日本戦に向けたイタリア国内の論調も、ブラジル戦での完敗をもって“ジャッポーネ、怖れるに足らず”という見方が強まった。ユベントス監督時代に薫陶を受けたGKブッフォン以下代表5人が、敵将となったザッケローニの手の内を知ることも強みだ。
日本代表が参考にすべきは前述のW杯予選チェコ戦だが、セリエAのシーズン終了から3週間弱が経過していたその頃、アズーリの心身のコンディションは谷底にあった。ブラジル入りした後、選手たちは次々に筋肉系疲労を訴えたが、経験豊かな代表トレーナー陣が組んだ回復メニューによって、代表チーム全体にキレが戻りつつある。
税関問題も無事解消され、アズーリの食卓には待望のイタリア産チーズや生ハムが並ぶ。彼らの食も進んで、コンディションは上り調子だ。W杯本番仕様のチームとしては未完成ながら、今のアズーリの脅威を誰より知るのはザッケローニだろう。