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攻撃絶好調のアトレティコに
影を落としかねないフラドの放出。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byUniphoto Press
posted2010/09/10 10:30
ホーム開催の開幕戦を4-0で大勝したアトレティコ。フラド(写真左)の活躍が光ったが……
開幕戦勝利にも貢献したMFフラドを移籍期限間際に放出。
アトレティコの今季を占う上で、さらに気がかりな点がある。それはMFフラドの放出だ。
今年24歳のフラドは、同年代の選手の中では“希代のセンスの持ち主”として早くから知られていた。その才能に惚れ込んだレアル・マドリーは、10歳の彼をカディスから引き抜き手塩にかけて育てた。ジダン、フィーゴ、ロナウド、ベッカムら“初代銀河系”に18歳で加わり、「ジダネス&パボネス(ジダンのようなスターとパボンのような生え抜き)」というスローガンにおける、象徴的な生え抜きとして期待されていた。
だが、他のパボネスと同様にトップチームでポジションを勝ち取れなかったフラドは、'06-'07シーズンにアトレティコへ移籍。'08-'09シーズンにはレンタル先のマジョルカで活躍し、昨季アトレティコに復帰すると、貴重なアタッカーとしてチームの攻撃を支えた。昨季のEL決勝、フルアムの守備を崩せずにいたアトレティコに流れをもたらしたのは、フラドの投入だった。今季の開幕戦でも先制点を挙げ、2つのゴールをお膳立てした。
今季の攻撃のキーマンとなりそうなフラドを、アトレティコは移籍期限ギリギリの8月31日、シャルケへと放出したのだ。移籍金1300万ユーロ(約14億円)、提示年俸も4倍増(!)と、アトレティコ、フラドの両者にとって魅力的なオファーであったことは間違いない。
フラドが抜けた穴を埋められる選手はいるのか?
しかし、仮にフォルラン、アグエロ、シモン、レジェスの4人のうち誰かが戦線離脱した場合。または4人による攻撃が行き詰った場合。現在のアトレティコには、それらの状況を打開できる駒も策も見受けられない。フラド放出の穴埋めとなる戦力も獲得できなかった。
攻撃で“違い”を生み出せるフラドがいなくなったことを、早くも嘆いている選手がいる。不動のエース、フォルランである。
「ドイツでの成功を祈る。だけど、正直に言うと、フラドと一緒にプレーし続けたかった」
この先、アトレティコがフラド放出を悔やまなければいいのだが。