MLB東奔西走BACK NUMBER
メジャーで躍動する永遠の野球小僧。
天衣無縫な川崎宗則、本当の価値。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/06/08 08:01
5月26日のオリオールズ戦で逆転のヒットを放ち、ファンの声援に応える川崎宗則選手。ここまで(6月5日現在)の成績は打率.214と無安打が続き低迷している。正遊撃手のレイエス選手の復帰も迫り、正念場に立たされている。
「サンキュー ベリー マッチ。マイ ネーム イズ ムネノリ カワサキ。アイ アム フロム ジャパン。アイ アム ジャパニーーーーーズ!!!」
5月26日のオリオールズ戦。チームをサヨナラ勝ちに導く決勝2点ツーベースを放ち、ヒーローインタビューに登場したブルージェイズの川崎宗則選手が発したこのフレーズは、日本はおろか全米中で話題となった。
ESPNなどのスポーツ番組で取り上げられる一方で、MLBの公式サイトでもビデオとしてアップロードされ、さらにYouTubeなどでも公開され、瞬く間に人々の心を掴んでいった。
これ以降、川崎の認知度は全国規模で急上昇し、今や遠征先でもファンから声援を受けるほどの人気ぶりだ。
メディアの間でもすっかり評判となり、ブルージェイズ担当ではない知り合いの記者たちからも「歴史的なスピーチだった」「最高に愉快だった」等の感想を聞き続けた。誰もがみな、川崎のマイク・パフォーマンスを好意的に捉えている。
“英語が堪能ではない陽気な日本人選手”の本当の実力。
だが川崎の人気、認知度が高まる一方で、果たしてどれ程の人たちが彼の“真の価値”を理解しているのか甚だ疑問を感じている。
4月13日のメジャー昇格以来、川崎がチームに及ぼした影響は、当たり前だが今回のマイク・パフォーマンスに代表される“英語が堪能ではない陽気な日本人選手”という一言で片付けられるものではない。それはジョン・ギボンズ監督の川崎評に如実に表れている。
「ホゼ・レイエスが負傷した時、我々は今後どうすべきか途方に暮れていた。その一方で、カワサキについては正直ほとんど知らなかった。にもかかわらず、ここまで打撃、守備ともに自分たちの期待以上の仕事をしてくれている。今では彼がいないことを想像もできないほどで、まさに彼以上の存在はいないと考えている」
ブルージェイズが川崎とマイナー契約を結んだのはキャンプも佳境を迎えた3月2日のこと。メディアはおろかチーム首脳陣でさえ現在の川崎の姿を想像すらしていなかった。
地元メディアの1人から聞いたところでは、レイエス選手の負傷によるメジャー昇格も、彼の活躍次第ではすぐにマイナーに戻す予定だった“試験”昇格だったらしい。それが監督の言葉通り、今ではチームを支える重要な存在になっているのだ。